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別れは突然に【side/周防 恭介】
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「なぁ………ごめんってば……」
俺はヒリヒリとする頬をさすりながら
たぶん、
50回くらい謝った
だけど椎名は
廊下の床を睨んだまま
沈黙を守っていた
木島の研究室に行っても誰もいないし
椎名はずっとこんな感じだし………
はぁ………
どうすりゃいいんだよ
――――確かに………
逆の立場だったら
俺は正気を保てないくらい
嫉妬していたと思う
椎名が嫉妬してくれたのは
単純に嬉しい
だけど、そのせいで
椎名を悲しませている事実が
俺の心を深く抉る…………
「はぁ――――…………」
「はぁ――――…………」
同じようなため息か正面から聞こえ
顔を上げると
ボクシング漫画から出てきたような
真っ白く灰になった
俺のマネージャーが
トボトボと歩いてきた
「あれ、尾野っち」
「お―――………恭介、
元気しとったか――――…………」
「どうしたんだよこんなとこで……
………なんかあったのか?」
「はは………あったもヤったも
大変やって…………
あ、俺……今日から犯罪者やねん……
……………よろしくなー……」
手を差し出されて
つられて手を出すと
尾野っちは
力なく俺の手を握り
ブンブンと振り回した
そうだ、
手錠の件、説明しないと……
「あ、あのさ……これのことなんだけど」
「え――……?どれー……?」
「美緒じゃなくて、違う奴と繋がれちゃって
いや、繋がれちゃったのは
俺のせいなんだけど………
木島に外してもらおうと思ったら
アイツいなくってさ……」
なんか……いつもの俺らしくない
たどたどしい説明に
気持ち悪くなった
「あぁ、そのことか」
尾野っちはぼーっとしながら
背広のポケットに手を突っ込むと
金属片を取りだし
手錠の鍵穴に差し込んだ
『カチャリっ』
…………………は?
「ほれ、開いたで」
状況がわからないまま
唖然としていると
尾野っちは
椎名の手錠も開け放った
「よかったなー……」
「お、おぉ…………」
よかった………
そうだ、よかった!
鍵を開けるために
さ迷ってたわけだし!
これで椎名の機嫌が少し良くなるかも!
「椎名、開いたぞ!よかっ……た、な……」
振り返り椎名に話しかけると
ピッコンピッコンと点滅するくらい
もぬけの殻で
本体は数メートル先まで
全速力で逃げていた
「ちょ……おい!待てよ!」
俺は手首にぶら下がっていた手錠を
投げ捨てて
足をもつらせながら
全力で追いかけた
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