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俺だけなのか……?【side/周防 恭介】
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椎名がいない
走っても走っても
姿が見えない
「椎名!」
呼んでも返事がない
嘘だろ?
どこに行ったんだ………
椎名…………
―――ヤバ………
血の気が引いて
頭がグラグラする
立っていられない………
―――――――………
大切な人が傷つかないように
誰の目にも触れないように
小さな箱に入れて
肌身離さず持ち歩いていたい……
片時も離れず
あらゆる困難から
この手で守りたい
――――なのに
大切にしたい相手を
傷つけてしまうのは
いつも自分で
自分さえいなければ
この人は幸せになるんじゃないかって
そんな気持ちになる…………
みんな恋をすると
こんな風になるものなのか?
それとも俺だけ?
………………わからない
俺は
自分の左手首に残った手錠の跡を
そっと撫でた
もっと深く傷が付けばいいのに………
離したくない………
ずっと
そばにいたい………
50回……100回……1000回……
一万回………何度でも謝るから
どこにも行かないでくれ
俺から離れないで………
そばにいて…………
俺は震える両手で顔を覆い
フラフラの体を支えきれず
教室のドアに寄りかかろうとした
しかし、
そこにドアはなかった
「わ………っ…」
さっきまであったはずのドアが
ポッカリと空洞になっていて
ドアにぶつかる衝撃をすり抜けて
バランスを崩しながら
無防備に吸い込まれていく
『ボスっ』とブレザーとブレザーが
擦れる音がして
俺はか細い腕に包まれた
「僕を捜すの、もう諦めたんですか」
ハッとして
目を開けると
不機嫌な椎名の顔が
景色いっぱいに広がった
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