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僕と『周防恭介』の出会い【side/椎名 春馬】
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初めて『周防恭介』を見たのは
2年前の夏
清涼飲料水のCMだった
―――……カッコいいな、この人
「珍しいわね、アンタが
画面を食い入るように見るなんて」
隣で雑誌やら週刊紙を読み漁っていた
『西園寺 奈津美』が話しかけてきた
「…………別に、見てないし」
僕は興味を失ったように
手元の本に目を落とす
『西園寺 奈津美』は雑誌を放り投げ
何処かに電話をかけた
「あ、もしもし?私
清涼飲料水に出てる奴、誰?
え?『周防恭介』?
新人?……………ふぅん………」
『スオウ キョウスケ』
頭の中で
その名前を繰り返し呼ぶ
ドクドクと脈が速くなり
体が熱くなった………
――――この女王気取りの母親
大物女優風を吹かして
いつも無駄に偉そう
仕事ばかりで
家庭を犠牲にするこの女に
父親は愛想を尽かし出ていったが
僕はこの女と暮らす道を選んだ
いつも家にいないなら
物理的にもたらされる結果は同じ
お互い干渉し合わない関係は
親子としては破綻
異質なものだったけれど
僕にとっては
とても居心地がよい環境だった
―――しかしこの
無名の新人モデル
『スオウ キョウスケ』の
登場により
僕と『西園寺 奈津美』の関係が
大きく変わっていく………
「見て」
一週間くらいしてから
そう言って『西園寺 奈津美』が
僕に見せてきたのは
真っ黒く見えるくらいに
予定がギッシリ書かれた
スケジュール帳だった
「……僕に話しかけてくるなんて
どういう風の吹き回し?」
「いいから、早く見なさいよ」
「………どこを?」
「ここよ、こ、こ」
指で示された場所を
面倒くさそうに見ると
僕は少しだけ目を見開いた
『13時 周防恭介と雑誌対談』
「いいでしょ」
「…………………別に」
何なんだよ、いったい……
関係ないし………
と、思いつつも
僕は本屋へ向かい
その雑誌を立ち読みした
『西園寺 奈津美×周防 恭介』
体を絡め合うようにして
二人で写った何枚かの写真と
1ページ半にも及ぶ
二人の会話の数々に
僕は読み続けることができず
『バンっ』と勢いよく
雑誌を閉じた
―――――今思えば
あの時感じた
モヤモヤとした正体不明の嫌悪感は
…………嫉妬だったんだと思う
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