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撮影準備
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僕の『不安』は
2人のプロの手によって
すぐに『取り越し苦労』へ変わった
「春ちゃんがやり易いように
テーマ、決めちゃいましょ」
マイキーさんが
ゴツい体の前で『パンっ』と
手を打ちながら提案した
「テーマ、ね………
決めるっていっても、
この衣装じゃ限られてくるぞ」
恭先輩は手にはめた真っ黒なグローブを
指を絡めて
深くはめ直しながら答える
「そうなのよねー……
あれは?
『アリスに飼い慣らされた黒豹』」
「これは?
『黒豹に食べられるウサ耳メイド』」
――――会話だけ拾えば
ふざけているように聞こえるけど
二人はアングルを作り
用意された小道具を吟味し
時折、僕に視線を集めながら
真剣な顔つきで
話し合っていた
―――………恭先輩
…………かっこいい………
初めて目にする
『周防 恭介』が
本気で仕事をこなしていく様子に
『男』を感じて
僕の胸はドキドキと高鳴る
ここは、言わば
恭先輩の『職場』
彼の姿が
テレビや雑誌などを媒体にして
世に出る前の空間……
――――本当に
あの憧れ続けた『周防 恭介』のそばに
僕はいるんだ………
彼のテリトリーの中に
自分がいることが素直に嬉しくて
彼が仕事をする最中でも
時々、僕を見て
ふっ…と撫でるように
優しく笑ってくれる瞬間
離れていても
恋人として
特別なポジションを
与えられたような気分になった
「椎名」
名前を呼んで手招く恭先輩の元に
テクテクと走っていく
「なんですか?」
「可愛い、愛してる」
サラッと告白された僕は
僕はかぁっと顔を赤くした
先輩はイタズラっぽく笑ってから
すぐに真顔になる
「これからノンストップで
撮影に入るから
今のうち飲み物とか、
何か口にしとけよ」
「はい、わかりました」
と、言いつつも
先輩のそばにいたくて
マイキーさんが指示を飛ばす中
スタッフさんが忙しなく動く様子を
恭先輩の隣でいっしょに見守っていた
「………緊張してる?」
先輩は腕を組んだまま
心配そうに僕の顔を覗いた
「少し………でも、
先輩がいるから……大丈夫です」
「……………………」
先輩は僕に両手を伸ばしかけて
ピタリと途中で止まり
宙でぐっと握りこぶしを作ってから
力尽きたように僕の肩に置いて
頭を垂らした
「先輩?」
「……………はぁ……もつかな、俺…」
「え?何ですか?」
「何でもねーよ」
「さぁ、いきましょぉかぁ~♪」
今度は
マイキーさんが僕らを手招く
先輩は手のひらを天井に向け
僕にスッと差し出すと
「お手をどうぞ、アリス姫」
紳士的な『黒豹王子』へと変貌した
「…………………」
照れながら手を置くと
先輩は不敵な笑みを浮かべ
僕を見つめて手の甲へ口づけをし
悠然と先導しながら
僕を照明の中へと誘った
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