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残虐を漂わせる男
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教室に取り残された俺は
次の作業がわからなかったので
帰ることにした
尾野さん………照れてたのかな
それとも
本当に怒ってたのかもしれないな
何か行く前に
腹の足しになりそうなものを買って
いっしょに食べようか………
尾野さんとの約束の時間まで
あと1時間半………
けっこうギリギリだな
急ごう……
少し大股で歩き、
廊下の角を曲がろうとしたとき
『ゾクッ…………っ!』
俺はピタリと足を止めた
『…………何、だ……?』
俺が曲がろうとした廊下の角から
今まで感じたことのないような
とてつもなく残虐性を孕んだ殺気が漂い
ナイフで突き刺すような鋭いオーラが
身体中をビリビリと痺れさせた
殺気を受け流すのがやっとの俺は
立ち尽くし、
持ち主が現れるのを待つ
ゆっくりと視界に入ってきた
その男は
細くしなやかな筋肉を携えた体に
黒いシャツを無造作に羽織り
やや長い、真っ黒な髪の毛を
ワックスで後ろに流して
両耳にはシルバーやら
スワロフスキーのピアスが
ところせましと付けられていた
年齢は………
尾野さんよりも若い気がするが
明らかに学生の風貌ではなかった
左頬には
遠くからでもわかるくらい
縦に入った古傷があり
その傷を割くように開かれた
切れ長の真っ黒な目から
ギラギラと飢えた眼光を
撒き散らしていた………
吐き気を起こしそうなほど、どす黒く
息ができないほど、憎悪に満ちた
破壊的な凶悪性を身に纏った男は
立ち止まったままの俺の横を
静かに通りすぎていく
やがて影は遠くなり
いつもの校舎に漂う空気へと
戻っていった
―――――いったい、
今のは『何』だったのだろうか……
一瞬の『闇』を垣間見た俺は
いつの間にか
手のひらに指が食い込むほど
強く握った手をほぐし開くと
汗でぐっしょり濡れていた
漆黒の男の残り香が
鼻を掠める
―――――それは、
恭介と
同じ匂いがした…………
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