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別れた後も、お前を想う…
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「……だから、
妻とかじゃないし
僕は先輩と違って浮気なんかしません」
「…………………」
懺悔しながら
軽く俺を責めてくるあたりが
可愛いらしい………
鈍器で殴りながら
好きだって囁かれてるみたいで
『愛されてんな、俺』
………なんて変な自信につながる
人の気も知らねぇで
誰かまわず
愛想振り撒いて……
呑気な『彼女』だよ、
まったく………
「そんな泣きそうな顔すんな
大丈夫だ安心しろ、
お前のことは信じてるから」
そう言うと
椎名はパッと顔を上げて
大きな目をうるうるとさせた
「じゃあ……何で……………」
「わかんねぇの?」
椎名は少し考えて
申し訳なさそうに頷く
その仕草が可愛すぎて
怒る気力を完全に奪われた俺は
深く息を吸って
一気に理由を話した
「……スバルとかいう奴が
お前のそばにいて
お前の声や笑顔や
拗ねた顔、怒ってる顔を
気兼ねなく
聞いたり見てるのが許せねぇ
俺が今、
喉から手が出るくらい欲しい時間を
違う誰かが
手に入れてるって………
そう考えただけで
おかしくなりそうなんだよ」
「…………っ!」
「10分でもいいから
お前に会いたいって気持ちを
踏みにじられたみたいで嫌だったんだ」
自分の気持ちを
包み隠さず全部言うと
椎名はさらにしょんぼりし
「ごめん……なさい………」
泣きながら謝ってきた
馬鹿だな…………
お前のせいじゃねぇし
泣いて謝ってもらうために
言った訳じゃない
言葉にして伝えても
すべてが伝わるわけじゃないことを
お前が俺に教えてくれたんだろ?
ベッタリと寄り添えたのなんか
1日だけ………
その、たった1日で
俺のすべてを
『椎名 春馬』で満たしたんだ………
お前は昔から俺のことを
知ってくれていたかもしれないが
俺にとって
お前の心以外は
未知の領域………
お前が違う誰かに
奪われてしまうんじゃないか
やっぱり会えない奴とは
付き合えないって
思われるんじゃないかとか……
四六時中
お前の事を考えては
不安ばかりが募っていく
離れれば離れるほど
お前の状況が把握できなくて
不安で押し潰されそうになってんのは
俺の方なんだよ…………
―――――――――
何も言わずに
椎名の左手を取り
ジャケットから
あるものを出して
椎名を抱き締めるかわりに
手の中でギュッと握る
――――独占欲の象徴
心の繋がりを具現化させた
人間の知恵の1つ………
こんなのに頼るなんて
『愛されてる自信』とやらも
やっぱ大したことねぇな………
――――椎名と出会ったあの日………
タクシーで送り届けたその足で
走って店に駆け込んで
椎名の顔を
頭いっぱいに浮かべながら
悩み尽くして選んだ
シルバーのリング………
俺の中のありったけの
『愛してる』という気持ちを忍ばせて
椎名の弱々しい細い薬指へ
ゆっくりと滑らせた………
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