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僕と先輩を繋ぐもの 【side/椎名 春馬】
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先輩が僕の左手を取り
薬指にゆっくりと滑らせていく
キラキラのシルバーリングを
僕は涙が止まった目で
じっと見つめた
――――ウソ…………
なんで……………
一寸の狂いもなく
ぴったりとはまったリングを
触りながら
目の近くでマジマジと確かめる
サイズ………いつ計ったの?
っていうか、
どうして
僕が欲しかったものがわかったの?
「……………………」
嬉しすぎて
言葉が出てこない
先輩は
そんな僕の頭に手を置いて
髪の毛を数回とかした後、
リングをはめた時と同じスピードで
頬に滑らし、
涙を拭き取って
親指の腹で僕の唇をなぞった
久しぶりの先輩の感触に喜んだ体が
ピクッと反応する
あぁ……………
もっと触って欲しい………
僕を堪能し終えた先輩は
離れる瞬間まで味わうように
僕の肌から去っていくと
「浮気………すんなよ」
踵を翻し、タクシーに乗り込んだ
キス、
してくれないの?
「せ、先輩!待って!」
行かないで……
まだ言いたいこと
話したいこと
したいこと
されたいことが
たくさんあるのに…………
タクシーのドアが『バタンッ』と閉まり
先輩は僕の方を見た
ブラウンの瞳と目が合った瞬間
僕の胸がギュッと苦しくなる
先輩…………
恭先輩…………っ!
堪らず僕はタクシーに走り寄り
窓ガラスに左手を張り付けると
先輩もガラス越しに
左手を添えてくれた
透明な壁を隔てて
手と手が重なり合う
――――恭先輩……………
次は、いつ会えるの?
電話越しの声や
デジタルな文字だけじゃ
先輩が足りないよ……………
互いの熱が
ガラスを突き抜けてジワジワと感じる中、
先輩の手を見た瞬間
目にまた涙がじわりと滲んだ
――――恭先輩の熱を
僕から奪いながら、車が動き出す
どんどん小さくなっていくタクシーを
いつまでも見つめ
消えた瞬間に
目を閉じ
恭先輩の姿を頭に浮かべた
―――恭先輩の綺麗で長い
左手の薬指には
僕につけた
シルバーのリングと同じものが
キラキラと輝いていた………
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