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湯船の中で……♯2【side/椎名 春馬】
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そういえば……
恭先輩の体を
まともに見たことはなかった
技術室でした時も、
先輩は上着は脱がなかったし……
でも、撮影の時は……?
………そうだ、恭先輩
仕度する、って楽屋に行って
しばらく帰ってこなかった……
あの時は、
気持ちを落ち着かせるためだと
思っていたけど
本当は
傷を隠すため
きっと、さっきの脱衣室でも
脱ぐのを躊躇っていたんだ……
―――鎖骨辺りから下は
まるで別の人間の体みたいだった………
至るところに切り傷、火傷の跡
肉を抉られたような
皮膚の膨らみ
皮はひきつり
浅黒くアザが残っていた
どの傷も、正規な治療の痕はなく
繰り返し体を割きながら
何度も自己再生をした
目を覆いたくなるような
虐待の痕跡………
僕は血の気が引き
吐き気がして口元を手で覆う
涙で前が見えないのか
湯気で前が見えないのか
わからなかった
「…………黙って大人しくしてくれ……」
恭先輩のその台詞で
恐怖で震えていた僕の中の
何かが弾ける
湯船に沈められた体を起こし
立ち上がると
口を覆っていた手を外し
歯でギリギリと噛み締めたせいで
血が溢れ滴った唇を
開いた
「心配させたことは……謝ります」
ジャブジャブと音をたてながら
先輩に近づいていく
「その体を見て……怖くなった
怖くて恐ろしくて
震えが止まらない………
こんなに怖いと思ったのは
初めてです………」
恭先輩の前まで来ると
僕は先輩の目を睨んだ
「けど…………
僕が恐怖したのは
アイツに
首を絞められたからじゃない
それは
あのまま僕が死んで
あんたみたいな
どうしようもないバカ犬を
この世に
一人ぼっちにさせることへの恐怖だ!」
「…………な…ん…っ!」
何かを言おうとした恭先輩の肩を
僕は怒りに任せて
叩くように乱暴に押した
恭先輩は
ジャブ……と少しだけ下がった
「………黙って大人しく、だって…?
なら、そこらへんの玩具売り場にいって
クマとかウサギのぬいぐるみ
買ってこいよっ!
僕は先輩の人形なんかじゃないんだっ!!
愛する人を
身を呈して守って何が悪いっ!!」
僕はまた先輩に近づき
肩を突き放すように2度押した
バシャッとお湯の飛沫を上げながら
恭先輩の体がぐらつく
「自分のことはなんとかできる!?
あんたの目は節穴か!?
そっちこそ、
自分の体を見てみろよ!
全然なんとかなってないじゃないか!
それは自己犠牲って言うんだよ……
なんとかしてるなんて
言わないんだよっ!バカがっ!」
叫びなから両手で
傷だらけの体を突き飛ばすと
恭先輩は
茫然自失したように湯船に沈んだ
「傷だらけで………
やられっぱなしになって………っ
自分のためじゃなく
それが
誰かを守るためだって言うなら、
あんたに
僕を責める権利なんてないだろっ!!」
僕は涙を湯船に落としながら
片手で自分の髪の毛を
毟るように掴みながら
狂ったように叫んだ
「僕だって!恭がいつ、また
連れ去られて酷いことをされないか
考えただけで
身が心がバラバラになりそうなんだ!
僕だって怖いんだ!
…………怖いんだよっ!
恭が誰かに凌辱されるなら
自分が凌辱されたほうがマシだっ!」
「し、いな……………」
「全然わかってないのは……
そっちだろ……
自分だけ怖い思いしてると思ったら
間違いだぞ……っ
ふざけんなぁっ!!
…このバカ犬がっ!!」
――――真柴先輩………
確かに先輩が言っていたことは正しいよ
けど、この人に限って言えば
こっちの常識なんて通用しないんだ
これが両刃の剣だっていうなら
お互い傷つけ合いながらでも
守るしかないんだよ
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