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誰か助けて…【side/椎名 春馬】
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「…僕のことは諦めてください」
そう言い切ると
僕は踵を返して出口へ向かった。
想像していた通りの内容にうんざりする。
同じ台詞を
あと何回言えばいいんだろう。
逆の立場なら傷ついてしまうことを
さらりと言ってしまう自分が
どうしようもなく酷い人間に思える。
…………どうして僕なんだ。
僕なんか客観的に見ても
つまらない奴じゃないか。
取り柄と言えば勉強ができることくらいで
趣味もなければ特技もない。
会話も何を話したらいいのか
わからないくらい流行りに疎いし。
だから、相手は僕の内面ではなく
外面だけで好きだの付き合ってくれだの
言っているんだと
どうしても考えてしまう。
本当は
ちゃんと僕のことを見てくれているなら
別に男だって構わないのに…………
…………………………
……………………………………………
なんて思うわけないだろっ!
ダメだ!ダメだ!
このままネガティブな空気に身を任せてたら
『ハンバーグの横のポテトになりたい!』
とか言って人間放棄しそうでコワい。
なんで僕が
こんな目に合わなきゃならないんだ!
あぁもういやだ……
普通に高校生活を送らせて欲しい……
重い気持ちのままドアノブを掴もうと
手を伸ばした時、
想像していなかった展開が
僕を襲った。
後ろから腕を掴まれて
くるりと景色が回転する。
―――………な、何!?
体は強引に壁へ押し付けられ
衝撃で
小さく吐息が漏れた。
痛みを堪えながら目を開くと
涼しげな顔つきの坂崎先輩と目が合った。
――――えーっ……………と……
断り方を間違えたのかな。
それとも
僕の説明が不十分だったのだろうか。
「………あの、
話はもう終わったはずですが」
「終わったよ。………話はね」
不敵な笑みを浮かべる彼を見て
全身の血の気が引いた。
――事は悪い方向へ進もうとしている。
慌てて拘束から逃れようと体をよじったが、
びくともしない。
両手首を高い位置で固定され
足の間に体を入れられた僕は
完全に身動きがとれなくなった。
…………油断した。
優しそうな感じの人だし
態度も紳士的だったから
大丈夫だと思ったんだ。
「こういったやり方は、
僕の趣味じゃないんだけどね」
そう言ってるわりに
顔が生き生きとして見えますけど?
このシチュエーションは
過去にも幾度となく遭遇しているし
その度になんとか貞操は守ってきたけれど
さすがに今回はダメかもしれない。
耳元に坂崎先輩の息がかかり
言い知れない緊張感で体が硬直した。
コイツ………っ!
何す「……やめっ……………っ、く…ぅあぁっ……」
首筋にざらりとした舌が這い
ガクッと足の力が抜けた。
「可愛い声……ゾクゾクするね」
うっとりと酔いしれた坂崎先輩に
間近で囁かれ
嫌悪感で吐きそうになった。
「初めてじゃないんだろう?
ココを……ぐちゃぐちゃにしたら」
「……………!……んっ………」
股間に固くなったものを押し付けられ
性的な刺激を受けた僕の体も
敏感に反応してしまう。
「最高に淫らな君が見れそうだ」
何で僕がこんな目に……………
人は見た目によらないとは
よく言ったもんだが
ついさっき知り合ったばかりの人を
勝手に信用して
いいようにされている自分に腹が立つ。
どいつもこいつも
頭ン中はヤることでいっぱいなのかよ。
相手を思いやる気持ちなんて微塵もない
どうすれば自分が気持ちよくイケるかしか
考えない。
だったら相手なんて
道具でもAVでもエロ本でも構わないだろ?
自分の部屋で一人アンアン喘いでろよ!
………なぁーんて、心の中で毒吐いたって
状況は1つも変わらない。
けれど、これだけははっきりしている。
『こんな誰だか分からないヤツに
これ以上触れられるのは絶対にイヤだ!』
よし…………
思いきり叫んで相手が怯んだうちに
逃げ出すんだ!
………………っ
……………………っ、……………………っ
…………………………あれ?
声が……出ない。
情けないことに、
僕の声帯は恐怖で縮んでいた。
もうだめだ、おしまいだ……。
泣きたかったけれど
涙は一粒も流れてこない。
怒りと恐怖が混じり合うことを拒絶して
心が真っ二つに割けてしまいそうだ。
僕は残りの気力をすべて使って顔を反らし
近づいてくる唇を
ギリギリまで避けることしかできなかった。
―――――その時。
想像していなかった展開が
再び僕を襲った。
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