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バカバカ言うほうがバカなんだ
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「う……うわっ!」
ゼロ距離に先輩がいたことに
驚いた拍子で後ろへよろめいた。
「……っと」
彼のしなやかな腕に支えられて
なんとか倒れずにすんだ僕は
胸元を押し退けて慌てて距離をとる。
「す、すみません………」
と口を動かしたけれど
心臓がバクバクうるさくて
声を出せたかどうかわからなかった。
つか、近いよ!!
恥ずかしすぎて
顔を上げる事すらできない。
そんな僕の間抜けな様子に
先輩はまた距離をつめながら
呆れたようにため息をついた。
「……お前、バカ?」
「バ……?………ぁいたっ!!」
うつ向いたままの僕の額に
衝撃が走った。
な、なに?
僕いま…デ、デコピンされた!?
ジワジワと痛みが広がっていく額を
両手で押さえた。
「なんで黙ってんだよ。
『助けて!』とか
『近づくなこの変態ヤロー!』とか
言えって」
なんか……なんで怒られてるんだろ。
仕方ないじゃないか、
声が出なかったんだから。
「……声を上げても、
誰かが助けてくれる状況では
なかったですし、
それに、僕がどうなろうと先輩には
関係ありません」
とっさに憎まれ口を叩いて
すぐに後悔した。
こんなことを
言いたかったわけじゃないのに。
先輩に嫌われてしまっただろうか。
………ていうか、
何考えてるんだ、僕は!
周防先輩にどう思われたっていいじゃないか!
テンパりすぎて、
徐々に自分が自分じゃなくなっていく。
「お前やっぱバカだな」
――――まただ。
さっきから聞き慣れない単語。
唯一の取り柄であるものを
否定されている現状が
理解できなかったけど、
「お言葉ですが、自分で言うのも何ですけど
僕、成績は学年トップで優秀です」
一応、訂正だけすると
先輩はさっきよりも深くため息をついた。
「バカやっぱバカ!ぜってぇバカ!!
ネジ2、3本緩んでんじゃねぇの!?
お前が早々に諦めるから、
間に合わなくて
俺が出ていく羽目になったんだろっ!
ああいう時は蹴り入れたり
頭突きとかしろっつの!」
ネジ………
諦める………?
間に合わない、とか
どうしよう。
バカバカ言われ過ぎたせいか
先輩の言葉が全く理解できない。
ていうか、
なんでそんなこと
言われなきゃならないんだ。
僕の何を知ってるんだ、この人。
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