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「あ、じゃあ俺こっちだから」
校門で、祭月は左に曲がった俺とは逆方向に曲がった。
いつもあの公園で見かけていたから、てっきり家もこっち方向なのかと勝手に思いこんでいた分、少しだけ驚いた。
「今日はありがとね。また明日!」
「っ、…おう。」
笑顔で、バイバイと手を降ってくるから、つられて同じように返してしまった。
遠く輝く、ビルとビルに削られた朱い太陽に目を細めながら
俺は朱く染まった薄茶色の髪のソイツの背中を暫く見つめていた。
手を振られて、振り返す。
こんな事をしたのは、いつぶりだろう。
幼い頃の記憶を辿っても、もしかしたら無いかもしれない。
『別に那月君、怖くないのにね』
「……怖くない、か」
朱い世界へと遠ざかっていく後ろ姿に、それだけを呟いて、踵を返した。
微かに胸の辺りが高揚するような、ざわざわとした感覚を覚えながら…。
「………危なかったー」
この時アイツが小さく吐いていた言葉は、俺には聞こえていなかった。
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