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婚約者
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佐野side
「なつめ!!どこ行ってたのよ」
「ごめん。かずはは?」
「……」
病院に着くと、姉さんがいた。
姉さんは、俺の質問には答えずに黙り込んだ。
やっぱりな。
かずはの病室の前に行き、息を整えてからノックして入った。
「失礼します」
「あっ、なつめくん!」
「大丈夫?かずは」
「うん、平気だよ?お医者さんがちょっと大袈裟なだけだよー」
見た感じいかにも病弱そうで、だけど元気に振る舞う小さな体の女の子。
この子が俺の婚約者の柊かずは(ひいらぎ)
幼い時から彼女には変な癖があった。
寂しい時、誰かにかまって欲しい時、甘えたい時、
そういうとき、彼女はわざと大きな事故を起こして人を呼ぶ。
自分のために集まってくれる人たちを見て、安心する。
そんな癖があった。
「階段からするっと足を滑らせてね?そしたらこんなになっちゃった」
頭に包帯を巻いているから、かなり派手なこけ方をしたんだと思う。
「かずは」
「パパ!」
「大丈夫か」
「うん!なつめくんも来てくれたしね!」
「おお、なつめくん…すまないね」
「いえ。それよりも仕事は大丈夫なんですか?」
「ああ、もう行かなければならないよ。すまないがかずはに着いててくれるかな」
「はい」
かずはのお父さんは、死んだ父が働いていた会社の上司で、俺と姉さんのめんどうをよく見てくれてた。
ある日にかずはに会った時に俺は一目惚れされ、かずはがあの人に頼んで俺を婚約者へと仕立て上げた。
世話になってきた以上、断ることなんて俺にはできなかったから。
「あーあー。歩けないんじゃ暇だなぁ。なつめくん何か面白い話ない?」
「面白い話?うーん…あ、そうだ」
これがいつもの日々。
俺はかずはからは逃げられない。
だから、七瀬に想いを告げてもしも両思いになれたとしても、付き合ったりすることはできないんだ。
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