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祭囃子と煙管
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「ウッヒョオオ!!これが、祭りとかいうものアルカ?!」
「神楽ちゃんもしかして初めて?」
「私の故郷ではこんなのないアル。ねぇねぇ、あのふわふわしたのナンダヨ?
銀ちゃん見たいネ」
「え?どれどれ?あぁ、あれは綿飴だよ」
「綿飴?」
「甘くてふわふわしてるんだけど………食べる?」
「いいの?」
「勿論」
ふぉぉぉおおおっ!!!
美味しいアルと目を輝かせながら
綿飴にかじりつく神楽ちゃんを見ながら
今朝の何とも言えない剣呑さを思い出す。
副長_____土方さんから、告げられた内容
高杉晋助が江戸にいる、そのことは
隊内をピリつかせるには十分な内容だった。
高杉晋助は、言わずもなが
江戸中の誰もが知っている
過激攘夷派の鬼兵隊のトップだ。
そして、真選組は土方さんの指揮のもと
警備をガチガチに固めたのだが
僕、志村新八はその警備から漏れた。
今日は、もともと休みの日だったっていうのもあるけど、銀さんから
神楽ちゃんの初祭りの監視を
頼まれたからだ。
「新八ッ!?おい、新八ィッ!!」
「な、何?どうしたの神楽ちゃん」
「ここの支払いするヨロシ」
「あぁ、はいはい。って!!たこ焼き50皿ッ!?この短時間にどんだけ食べたんだよっ!!」
「こんなの朝飯前アル」
他人の財布で食べてるくせに
このふてぶてしさは何なんだ。
ったく、銀さんとまるで同じじゃん。
心中でそう悪態をついていたら
神楽ちゃんは僕の着物をぐいと掴んで
大きな蒼い瞳を下から覗かせながら
神楽ちゃんは口を開いた。
「銀ちゃんは、来ないアルカ?」
「う〜ん。今日は、無理じゃないかな?
多分。」
「あの、腐れポリ公共に捕まってるアルカ」
「腐れポリ公って、僕もその一員なんだけど。」
「お前は、違うアル。お前は、あいつらとは違うのはわかるネ、他人が自分に好意を向けてるかそうじゃないかなんてそんなの誰だってわかるアル。」
いつも通りの神楽ちゃんの筈だけど
何処か気落ちした様な声色で呟かれる様な
言葉が耳に残ったが、その次の瞬間には
僕が感じていた違和感はなくなった。
「新八、今日花火ってゆーのがあるって
銀ちゃん言ってたヨ!!何アルカ?」
「花火ってゆうのは空に打ち上げるもので、神楽ちゃん初めてならびっくりすると思うよ」
「マジあるか?!でも、新八。花火って
曇ってても出来るアルカ?」
神楽ちゃんにそう言われて
顔を上げると
夕日から夜に差し掛かるような
紫がかるような色をした空は
見るからに重たい鉛色の雲が浮かんでいて
どんよりする様な空が一面に広がっていた。
※
「疲れた。休みたい、帰っていい?」
「坂田副長、俺が怒られるんで止めて下さい。」
「えーー。じゃあ、かき氷食べたいから買ってきて、暑くて溶けるから」
「溶けません、仕事して下さい」
かき氷、かき氷、かき氷、かき氷と
呪文のように唱え続ける銀時に
やっと水城が折れた。
「わかりました、買ってきますから買ってきたらちゃんと仕事して下さいよ」
銀時は、水城が離れていくのを
見送り近くのベンチに腰を下ろした。
___瞬間
先程まで新緑の葉一つとて
揺れていなかったのに
ザァァと音をたてるような
強風が舞い込む。
背後に気配を感じたと同時に
間髪入れずに
背中に冷たい何かが押し当てられる。
木刀に手をかけようとした
手をぎりぎりと掴み上げられ、顔を歪めた。他人をいとも簡単に殺してしまいそうなそんな静かでいて狂気的な殺気が
背後からの刀によって伝わってくる。
「………っ!」
「動くんじゃねぇよ、刺されたくなきゃなぁ」
「誰だ」
「久しぶりに、デケェ祭りがあるって言うから来てみれば、花火なんかより珍妙な見世物があんじゃねぇか、なぁ、銀時ィ?いや、白夜叉といったほうがいいか」
「……おま、高杉か?」
趣味の悪い笑いかた
あの戦争の参加者しか知らねぇ筈の
その異名
知っている奴は限られる
ちらりと垣間見た高杉の姿は
昔のいでたちとはかけ離れていた。
「ぬるま湯に浸かって、勘までにぶちまったか?いや、それだけじゃあねぇか。
お前、何でそんな趣味の悪いもん着てやがる。」
「俺は、お前のその派手ばでしい女物の着物よりは幾分かマシだと思うけど?」
「状況が見えてねぇようだな、コイツでテメェの首はねるなんざ簡単にできるんだぜ、いや、あのガキ共の首がイイかねィ?」
「………高杉っ!!」
「昔からとんだ馬鹿だと思っちゃいたが
ここまでの馬鹿だったとはねぇ?
銀時、お前がソコにいる意味知らねぇとは言わせねぇぞ」
今までに向けられたことのないほどの
殺気を背中から感じる
こいつが“アイツ”を誰よりも
慕っていたのは知っている
こいつが俺を殺しそうな瞳で
見てくる理由も分かっている
「意味?知ってるさ。俺がアイツのこともお前らのことも全部忘れて幕府の狗に成り下がったこと、だろ?」
俺には近藤勲に返さなきゃいけねぇモンがある。それが終わるまで。
俺にもう一度生きるということを
教えてくれたアイツに恩を返すまでは
それまでは。
恨まれようが
殺意を向けられようが
俺は俺の道を歩む。
俺にはこういう生き方しかできねぇんだ
こういう生き方しかしてこなかった
ただ、今、言えるのは
たった一つ
「俺は、真選組の坂田銀時だ。
だから、攘夷志士高杉晋助お前は俺の敵、だろ?ただそんだけだよ」
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