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変化と不変
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日が余り入らないこの部屋は寒い
温度調節が可能なクーラー、暖房の類いも無い為、その寒さに身震いして目が覚めた
身体はまだ起きていないというのに
寒さが睡眠を妨げ半ば強制的に
半目を開く、布団を被ってるのにも関わらず寒さを感じるこの部屋に耐えかね
何時もの着流しにジミー君に貰った赤黒い羽織を早急に羽織って部屋の外に出る久々に感じる暖かい日差しは一瞬で
冷えきった身体をぽかぽかと温めた
「・・・もう昼か」
「副長っ~~!!・・・起きたんですかっ!!!ていうかっ、その羽織りは!?」
「ジミー君、うるさい」
「しょうがないですよっ、だって副長、まる一週間、部屋から出てこないし・・・心配したんですからねっ!!!」
「ふーん、そうなんだ」
「ふーん、じゃあないですよっ・・・副長きいてるんですかっ!?」
「ジミー君、そんなことより。あっち、見てみ?」
「あっちですか?・・・何もないで・・・!!ふ、副っちょおお!?」
「じゃあ、頑張ってね」
さっさと退散しようと自室に戻り
隊服に着替えていると
ドドドドと地響きのような足音が
ここらに響き渡り
悲痛な叫び声があったと思えば、バキッ、ボキッと嫌な音がこっちまで聞こえてくる、居なくなったか?と音を敏感に捉えていると
突然、グーッと腹の音が鳴った
そういやぁ、ここんとこちゃんとした飯食べてなかったな
少し不恰好な握り飯に山崎とメモ書きが残されていてここ一週間の食べるモンには困らなかったが
てか、山崎って誰だっけ
まぁ、いいか腹減ったし、食堂にでも行けば思い出すか。そう考え、歩き出すと局長室の前で素振りをする人影が見えた
その人物は、俺を捉え、おぉと感嘆の声を上げて人好きの表情を浮かべる
「おぉっ、銀。起きたか?・・・心配したんだぞ」
「あんたこそ元気そうで何よりだよ」
「屯所にはなれたか?」
「んっ?まぁ、慣れたけど・・・あのよぉ、“銀”って呼ぶの止めてくんない餓鬼みたいだし」
「そうかぁ?・・・俺は結構気に入ってんだけどな、銀って。
それに、俺から見りゃあオメェはまだまだ餓鬼だから良いんだよ」
「へいへい。ソウデスカ~~俺は、どうせ餓鬼ですよ。流石、マッパで素振りする変態ゴリラの言う事は違うね~」
「なっ・・・何を言うかっ!!!これは、この辺じゃあ有名な素振りなんだぞ、これを教えて頂くのに、どれほど苦労したことか」
「いや・・・それっ、絶対騙されて、つうか“変態ゴリラ”に突っ込めよ!!
それでいいのか、ずっと変態ゴリラで通るぞっ!!!」
「騙されているはずが無い。あの可憐な女性に限って、確かにお金やその他諸々飛んでいったがな
俺のためにお守りまで作ってくれて・・・ヴぅぅぅっ」
顔から出る全ての液体を垂れ流しているゴリラの手元を見ると
確かに、お守りらしいものを持っているが、そのお守りはこの世のものとは思えないおどろおどろしい色に、
でっかい文字で『死』と刺繍されていて何か呪いでもかかってそうだ
「へー、そ、そうなんだ」
そのお守りに自然と口元が引き攣ってしまいゴリラを哀れみながらも適当な返事を返す
色々と突っ込みどころ満載だったが、面倒事には関わりたくないので
全てスルーして、食堂に向かったが後ろからゴリラに呼び止められたので、
首だけ後ろに寄越し、ゴリラを見やると
いつの間にかゴリラは目の前に近寄ってきていたようでゴリラと向き合う形となった
「銀時」
「・・・何だよっ、急に」
「すまなかったな、俺の配慮不足だ」
「何のことだよ?」
「最近の屯所内での噂は、俺の耳にも入ってる」
「別にあんたが気にすることじゃあないだろ、それにこういうのは慣れっこだよ」
「慣れるなっ―こういうのは慣れちゃだめだ」
俺の目とゴリラの強い意志を持った目が
絡み合い暫くの間見つめあう
この人は、ほんと目を逸らすということを知らないねぇ、逸らした方が楽だろうに
「あんたもおせっかいだね」
「おせっかいは俺のチャームポイントだよ」
ニカッと笑うその人に吊られ
俺もふっと、目を細める
「褒めてねぇつっの
つか、チャームポイントって意味違うだろ」
「銀時、お前食堂に行くのか?」
「何だよ、藪から棒に」
「腹も減ったし俺も行こうかと思ってな」
「大丈夫かよ?」
「何がだ?」
「いや、あんたの部屋全開で丸見えなんだけどよぉ、机の上に大量の紙、置いてあんだけど」
「なっ、何!?・・・はっ、そういえばトシが今日までの書類があるとか言ってたような」
まさに今、思い出しましたと言うような表情で部屋にダッシュで駆け込むと
大量の書類?を焦りつつ目を通していた
あの、ゴリラのことだ何とかなるだろうとかポジティブシンキングを間違った方向に持っていきそうなものだが
意外とやることはやってんのか
軽く手を振りながらまぁ、がんばってと一言声を掛けて俺は、食堂に向かった
食堂に来るまでも感じてはいたものの
ここは、更に鋭い視線を感じる
恐らく攘夷浪士に襲われた事件を皆、知っているのだろう
よく分からない奴が、就任して一ヶ月も経たない内にやられたとなれば不信感も募るだろう
昔もこんな視線が己に向かってきた為慣れてた事だが、
全く気にしていないといえば、嘘になるし、居心地の悪さも感じる
誰にも気づかれないようふぅと一呼吸置いて食堂に入れば
異様な静けさが食堂を包み込み、だが空気はピリピリとしているように思う
おばちゃんに今日の定食メニューを頼み、お盆にのっけてもらうとテーブル丸々1つ空いている場所に座って
箸を取り食べ始めてもなお
幾つモノ視線が俺に纏わりつくように絡み合う
気にしていてはせっかく旨い飯が不味くなるので気にしないよう黙々と食べ始める
ようやく、沈黙がなくなり食堂がざわざわと
活気を取り戻し始めた時だった、俺の前に影が差し込まれた
又、水でもぶっ掛けるつもりかと上を見上げると、お盆を片手に持ち
栗色の髪、同じく栗色の瞳をした隊長各の隊服を纏いにこやかな笑みを浮かべる少年が立っていた。
「ここいいですかぃ?」
「・・・どうぞ」
特に断る理由も無いのでそう答えると少年は、俺の目の前ではなく真横に腰を降ろした
「髪の毛、染めてないんですねぃ?」
「んっ?・・・あぁ、俺のは地毛だよ。睫毛まで染めないだろ?」
どれどれとこの少年は顔を寄せてきて確かめ本当ですねぃ、と溢す
さっきまで、ざわざわとしていた食堂が静かになったと思ったらどうやら隊士達は
この少年の動向を探っているようだ
あちこちから、沖田隊長をどうやって引き入れたんだかとかどんな手を使ったんだ等
似た様な言葉がひそひそと話されていた
何を勘違いしてんだが
隊士達の会話から察するに沖田というらしいこの少年と会話と言うには程遠い
何か聞かれれば俺が答えるという会話を続けた
そして定食も食べ終わり食器を片そうと席を立つと唐突に話を切り出された
「坂田さん、あんた甘味好きですかぃ?」
「好きだけど・・・何?」
「じゃあ、今日のデザートのゼリーあげまさぁ」
「・・・ありがたく頂戴しとくよ」
ゼリーを受け取り、お盆を持っておばちゃんたちに渡し、ごっそーさんと告げると
食堂をでる
俺が出たと同時に沖田と言う少年も食堂を出てきた
「坂田さん、明日も一緒に食べましょうや」
「沖田くんだっけ?何考えてるか分かんないけど、その薄っぺらい笑顔と演技止めたら?
そらぁ鳥肌もんだぜ、・・・あっ、ゼリーサンキューな」
怒っているのかお礼を述べられたのかよく分からない己に向けられた表情を思い浮かべ
銀時の背中に視線を置き
暫時、きょとんとした表情だった沖田は
直ぐ様真顔に戻ると一人呟いた
「分かってんなら、早く言ってくだせぇよ」
※
「あっ・・・坂田副長っ!!!やっと、見つけましたよ」
「何っ、ジミー君、銀さんもう寝たい」
「まだ、昼ですよ何言ってんですか!?あっ・・・坂田副長お昼食べちゃったんですか!!」
そうだけど何でしってんの?、とさぞ
どうでもよさそうに話す坂田副長に俺は肩を落とした
今日こそ、一緒に食べようと思ってたのに・・・うっ、うぅ
「ジミー君、何やってんの、で?何か用があったんじゃあないの?」
「えっ・・・はい。ありますけどその前に口元にソースついてますよ」
えっ、どこどこと口元を一生懸命拭う
坂田副長に笑みが溢れる
恥ずかしいのか、ほんのり耳が赤くなっている
「で、何?」
俺が笑ったのに気づいたのか
少し拗ねたような声色で返答された
「明日から坂田副長には見回りしてもらいます、局長から聞いてますよね?」
「いいや、聞いてねぇが?」
「はっ!?まじですか?」
あぁ、と答える。坂田副長を反応を見る限りあのゴリラ、言って無ぇのかよ!?と半分切れかかって声に出しそうだったのを抑えて
そうですかと話を進める
「それでですね見回りって言うのは市内を歩いt「あぁ、はいはい。悪い奴いないか見て歩けばいいんだろ」
「そうです・・・あぁ、後、見回りにはローテーションがあるんですけど坂田副長はこっちに来たばかりのようですので暫くは俺や
各隊長、副長と一緒に見回りして貰います、因みに明日は俺と見回り・・・って、なんですか、その嫌そうな顔は!!」
「ジミーくんの地味オーラが移りそうだし・・・サボりたいし」
「坂田副長、聞こえてます、ほんと泣いていいですか?
まぁ、少々の休憩くらいならとってもいいですし、
後は一人での見回りは先日の件のような事もよく起こるので、基本二人から三人程度の体制で、坂田副長には帯刀してもらいますね」
「帯刀か」
「坂田副長・・・どうかしましたか?」
「なんでもねぇよ」
何故か坂田副長の様子が何時もと違うような気がする
いつも何を映しているのか分からない瞳に映って見えたのは明らかな“戸惑い”
だが、それも瞬時のことですぐに消えてしまう
俺は、そんな坂田副長のほんの一瞬だったが見えた変化が少し嬉しく感じた
「ジミー君、そういえば。山崎って名前の奴知ってる?
何か俺の部屋の前におにぎり握って置いといてくれた奴なんだけど」
どっかで聞いたことあるんだけどな~っと溢す坂田副長の言葉にショックをうけた自己紹介したのに忘れられてる、、、。
「坂田副長っ・・・山崎は俺ですよっ!!!
自己紹介したじゃあ無いですか、ひどいですよ」
「あぁ、そうなの。悪い悪い、なんせ地味だからな」
地味だから駄目なのかっ・・・地味だからぁぁあああ。
何で俺は地味なんだ、てか、イメージが地味って何!?
自分でもなぞの地味の無限ループに陥ろうとしていたら、坂田副長が
「・・・ありがとっ」
お礼の言葉を溢した
その言葉は、そっけなく聞こえる類のものだが
あの坂田副長がお礼を言ってくれた事に数秒硬直してしまい意識を取り戻し顔を上げると
さっさと、先に行ってしまった坂田副長は丁度曲がり角で追いかけようとした所
ふと目に付いた耳が赤く色づいていて
俺は開いた口が塞がらず
伝染するように俺の顔も赤くなってしまい、俺は、暫くの間棒立ちのまま廊下の真ん中で放心状態でした
これが世に言うツンデレって
奴なのでしょうか
俺にはよくわかりませんが
取り合えず
ツンデレってイイですね
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