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曇りと無心
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珍しい毛色をした男が店の暖簾を潜ってから、幾分もたたずして
客の男がのそりと身体を起こす
それを見たお登勢がグラスを磨いていた手を止め話しかける
「狸寝入りかい」
「んな人聞きの悪いこと言わねぇで下さいよ、俺はただ突っ伏してただけだよ、少しばかり半目でさ」
「それを、狸寝入りって言うんだよ」
若い客が、溜め息混じりに言葉を吐き、
お猪口に残っていた、酒を煽る
「しょうがねぇよ、あんな生気のない顔した男、見るのは初めてだったんだ」
「何で、んなことはわかんのに女の見分けもつかないのかねぇ」
「ほっといてくんな、今日も女に振られたばっかりなんだ、おかげで酒が進む」
若い客の話を耳に挟みながら、
お登勢は店の戸をガラリと開け
店の暖簾を下ろし、近くの灯籠の火を消す
「まぁ、何にせよ。今日の営業は終了だよ。こんな湿気たスナックに来るより
いい女でも見つけて、慰めて貰いな」
若い客は、冷てぇなと悪態をつきながらも
おぼつかない足取りであったが家路についたようだった
お登勢は若い客を見送り、店の中に戻ろうとすると、視界に白い煙らしきものを
捕らえ、チラリとそちらに目線をやると男が煙草を吸っているのが目に入る、
何時もなら気にもしないようなことだったが今日は違った
白い煙があの男を連想させる
―生気のない顔した男、か
「確かにねぇ、あれじゃ、死んだ魚の目だ」
※
所変わって真選組屯所、門前
「何処行ったんでしょう」
「山崎、取り合えず落ち着け
アイツもいい大人だ
取り合えず、……警察に連絡をっ!!」
「二人で何、アホやってんだ」
もう、丑三つ時
銀時が帰らないのを心配し、
山崎と近藤はあたふたと銀時の帰りを今か今かと門前で待ち構えていたが、後ろから妙に聞き覚えのある
そして、待っていた筈の人物の声が
聞こえ、それに反応し山崎と近藤は振り返り
どちらともなく声をあげる
「旦那ァ!!」
「銀時っ!!」
「そんな怪我でどこ行ってたんだ、ったく」
「ほんとですよ!!今まで何処にいってたんですか、ていうかその包帯はなんすかこの前より増えてるじゃないですか!!」
「あー、甘味巡り?包帯は気のせいじゃねぇの?」
「甘味巡りでんな怪我しませんし、気のせいな訳ないですよ」
「だから、甘味巡りの最中に虫けらが現れて、ちょっくら戦いに出てたんだっつーの」
「まぁ、何にせよ無事で良かった」
近藤は山崎が何か言いたげなのをせいし、銀時の頭をポンポンと親が子供をあやすように叩くと、
銀時はその行為に顔を歪ませる
「子供扱いすんなよ」
「いや、わたあめみてーな頭だったから、ついな」
「それは、俺の頭を馬鹿にしてんですかっ!!」
「ちょっと、旦那落ち着いて下さいよ、局長も旦那煽るような言い方せんで下さい」
その面倒そうに頭をボリボリとかく銀色に向けられる以前とは異なる視線
その銀色を憎むような貶めるような視線ではない
ましてや、慈しむような好意的なものでもない
例えるなら、無
そんな視線が銀色に向けられている
もう、真夜中を回り深夜2時過ぎ
銀時は、屯所の大浴場でひとっ風呂浴び自室に向かい、その最中の廊下に銀時とは違う足音が響く
夜中をとっくに過ぎて深夜を迎えている、照明などついてるはずもなく
今日は、空一面灰色の曇天模様
明かりは射さない
その為、誰がなんてのはわからない
銀時ともう一方の足音がだんだんと
近づき、すれ違う
「火種になって貰いますよ、坂田銀時さん」
男は、暗闇に浮かぶ
全身真っ白のその人を
見つめながら
瞳の中に焔を燻らせそう呟く
男が何をしようとしてるのか
何を思い、何が目的なのか誰もわかるものはいない
―ただ一つ、分かっているのは
何かが起こる予兆
坂田銀時のまわりに蠢く
怪しげな影があるのだけは確かだった
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