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激昂(*)
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「こ、うかいって何? 俺を抱いたことか? 俺を捨てたことか?」
「全部」
先輩は、さっきまで怯えていたのはどこへやら、新樹に掴みかかった。
そこで、分かってしまう。
怖くても、やっぱり兄弟だから大切なんだと。
滅茶苦茶にされたことや…捨てられたことがショックだったのだと。
だから、こんなに激昂する。
「もっと、上手くやる方法があったのに、選ばなかった俺の弱さが悪かったと思ってる」
「上手く、やる方法?」
「俺は……遥人を、助けたかった。だから、ああした。でも、きっと、もっと考えればいい方法があった」
「あれで、助けてくれたつもりだったんだね。確かに…生活は、よくなったけど、その代わり、俺は沢山失った。もう、あんたに感謝すべきなのか恨むべきかも分かんねぇよ! しかも、あんな風に捨てやがって…なのに、愛してるだ?ふざけんなよ?」
こんなに大声で、感情を荒らげることができる人なのか。
でも、その表情は生々しくて、人間らしくて…
これが、本当の先輩なんだろうな。
「結生が、さ…俺があんたに調教された通りになる度、一瞬嫌そうな…苦しそうな顔するんだよ。キスされた時とか、セックスが辞めらんないこととかさ……そんで、俺の初めての事を見つけると、すごい愉しそうに笑うんだ。俺、結生に、全部あげたかった」
「悪い」
「由真にも迷惑かけた。中学時代は、あいつにも辛い思いさせてしまった。知ってるんだぜ?あんたが由真に牽制してたこと。それが、由真を苦しめたの、あんた…分かってんの?由真は弱いんだよ!? 悠也や結生がいなかったらどうなってたか…」
「ごめん」
「瑠依にも変な伝言したみたいじゃん。要らない迷惑かけんなよ…あいつは何の関係もないのに」
「そうだな」
「彩も…あいつは悪くないのに冷たく当たったりすんなよ」
「うん」
「ホントに、お前のせいで俺に深く関わったやつが苦しむんだよ。それは俺も辛いんだよ…でも、あんたが恩人なのは事実で、もう、自分でもよくわかんねぇ…どうすればいいんだ!? 教えろよ!なあ!」
「…本当に、ごめん。身勝手なのは分かってるけど、俺とは普通の兄弟に戻ってくれ。そして、結生くんと、幸せになってくれ!」
額を地面につけて何度も詫びる新樹の姿を見て、先輩は力なく座り込むと涙をこぼした。
「嫌いに、なれればよかった」
俺は、ただ、先輩を抱きしめることしか出来なくて、何も知らないで、何も言えなくて、何も出来ないことがむず痒くてたまらなかった。
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