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足りない 冬馬side
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俺の言葉を聞くと、紅那の震えは止まった。
でもまだ、何か不安なことがあるのか、俺を抱きしめる腕には力が込められていて離そうとしない。
それでも俺は、紅那が心から落ち着くのを待つ。
何故か今だけは、理性が働き紅那を無理やり犯すようなことはしなくて済んだ。
「大丈夫。…大丈夫だから。」
俺はそう何度も繰り返して、抱きしめ返す。
“大丈夫”
その言葉に深い意味は無いけれど、何となく俺には今の紅那はその言葉を求めているようなそんなふうに思えた。
それから少し時間が経つと、紅那はゆっくりと俺の背中に回されていた腕を緩ませた。
そして、紅那はやっと口を開いた。
「…最後までしても……冬馬はいなくならない…?」
そう口にした紅那は泣いてこそいなかったが、悲しそうで弱々しく、今にも泣き出してしまいそうな、そんな顔をしていた。
俺の気持ちはぜんぶ伝えたつもりだった。
だから、紅那にはもう俺とのことで不安なんてないと思ってた。
でも、きっと紅那の心に俺が残した傷は、それだけじゃ癒し切ることなんで出来なかったんだ。
愛してるという気持ちをちゃんと伝えるには、どうしたらいいんだろう。
一度傷つけた傷を完全に治す方法を何故俺は見つけられないんだろう。
紅那が望むことを俺は何でもしてやりたい。
大好きで、離したくなくて、愛したくて
嫌われるのが怖くて、居なくなってしまうのが怖くて
でも今の紅那には、やっぱりそれだけじゃ足りないんだ。
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