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美しい黒髪を持つ男
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恋人いない暦28年。気がつけばあと2年すれば30歳になってしまう。恋人が出来ない理由は俺が恋愛に対する感心が無いからだ。だからといって焦っているわけではない。
気分転換に外に出てコンクリートの上に座った。少し肌寒いくらいで木には桜の花が奇麗に咲いている。俺の職業は定食屋の仮店主で売り上げはそこそこで一人暮らしには十分すぎるくらいの収入を得ている。俺が仮店主なのは親父が風邪で寝込んでいるからだ。お袋は俺が5歳のときに病気で亡くなった。まぁ、そんなことはどうでもいいんだけど。頭の中でごちゃごちゃさせているうちに、誰かに話しかけられた。
「あの…店、開いてますか?俺、腹減ってて…」
「ぇ…あ、あぁ、勿論開いてるぞ。さぁ、どうぞいらっしゃいませ」
ずらっと一気に喋って軽く頭下げてチラ、と相手見ると俺より5センチほど背の高い奇麗な黒髪の営業マンだった。
その男の髪を靡かせるように風が吹き、それと同時に桜の花びらが舞った。
「そんなに見られると何か照れるんですけど…」
「す、すまん…っ。さ、さぁ、入って。」
俺はそんなに見ていたのか…っ。物凄く失態だ。赤い恥だ。
「エビフライ定食ください。あと、食後にホットコーヒーを」
「畏まりました。では、雑誌でも読みながら寛いで待っていてください」
当たり前の接客をしたら急に男が笑い始めた。
「さっきと全然言葉遣いが違うんですね。くく…っ…す、すみません…でも…ギャップが…あはは…っ」
この男は謝っているのか、それとも俺を貶しているのか…。まぁ、一言で言えば物凄く失礼な奴だ、と思いながらもスタスタと厨房に行き、エビフライ定食を作って彼に持っていった。
「ん、美味しい。俺、此処初めて来たんだけど、来てよかった。今日から此処でずっとご飯食べますね」
彼はニッコリと笑みを浮かべて言った。初対面の俺でも分かるくらいに眩しい笑みを浮かべて。
「…好きにしろ。俺はどうでもいい」
「はい、好きにしますよ。…あ、ここであったのも何かの縁なので自己紹介しますね」
「はぁ…っ?!いや、しなくていい面倒だから」
「俺がしたいだけですから…ね?」
「好きにしやがれ……」
と、俺は溜息交じりに言った。
「俺は、宮下遼です。職業は営業マンで歳は26です。趣味は読書です」
「…高坂春斗。見ての通り職業は定食屋仮店主。歳は28。趣味は同じく読書」
俺が自己紹介をすると宮下は少し驚いたように俺を見たが、微笑浮かべて握手をしてきた。
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