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五月雨
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5月5日(月)
雨空。
人は雨をあまり好まないけれど、僕は結構好きだ。空気中の汚れを流して綺麗にしてくれる。それと一緒に嫌な気持ちも洗い流してくれる気がするから。
え?ありがちだって?ほっとけ。
「整列ー!」
「「「「はい」」」」
「出席とりまーす。隼人。…」
結局僕は演劇部に入部した。今は一年の入りたてで、下っ端だから教えて貰ってばかりだけど、すごく楽しいし充実している。
毎日家では早口言葉とか筋トレとかもしているし、すぐに着いていけるようになるかな。
雨が止まない。この時期に降るのは五月雨って言うんだよね。たかが雨に色んな呼び方があって、本当に日本人は感性が豊かなんだなぁって思うよ。
そう言えば、仮入部に来た時も雨だったな。もっと土砂降り。
あの時の部長面白かったなぁ。あれは結局キャラだったんだよね。お兄さんだと思ってたらお姉さんだったし…今は舞台も終わってナチュラルハイ封印期間だから至って普通。
「ん…くん…るかくん……あれ?おかしいな読み方違う?悠くん!」
「え?あ、はい!」
「良かった〜読み方合ってるよね。ぼーっとしてたよ?大丈夫?」
「はい!ちょっと考え事してました。」
「おっけ〜。えーっと次は…足立。」
演劇部は僕ら部員、と言うか生徒の間では「えんぶ」と呼ばれている。愛称みたいな物らしくて事あるごとに「ENBoo」と書いている。
なんだかね。先輩と言えど、ほぼ女子だからさ、見てて楽しそうだなーって、青春だなって思うんだ。
オヤジかよ。
まあ、言えないけどね。
今は次の舞台に向けて早速みんな練習に励んでるけど、これが終われば3年生は引退して、残りの夏休みは全部フリーなんだよね。そしたら僕は、僕でいられるのかな。
天空は毎日部活で、もう全然一緒に登校もしないし休日も遊ばない。夏休みに入ればきっと、もっと忙しくなる。
極度の寂しがりやの僕に、それが耐えられるだろうか?
そこまで考えて、出席確認が終わって発声に移ったから、考えるのを止めた。
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