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第二罪 「黒ト紫」Ⅲ
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____スパァン!
勢いよく屏風を開いたのは、女顔に黒髪の少年、春(ハル)だった。
走って来たのだろう、春は弾む息を整えながらその場に座った。
「どうした、春」
「雅様に用があると言う青年が一人、城を訪ねて来ております。
何しろ、あの金の髪に緑の瞳、いかにも怪しいのですが…」
金に緑……!!
『お前に名乗る名などない』
昨日聴いた、芯の通った強い、しかし小さい低音が、脳をよぎり痺れさせる。
まさか………
「桜の間に入れろ」
「いいのですか?
心当たりがあるのですか?」
「いいから、入れてくれ」
心配して聞いている春を他所に、俺はもはや昨日の彼と会えるかもしれない期待と好奇心で夢中になっていた。
「はい、雅様…」
春が下がり、梢が傍まで駆け寄ってくる。
「あの青年、もしかして昨夜の…」
「間違いねぇ。
この街に、あんな容姿の者、二人といねぇさ」
「………雅様」
早速屏風に向かって歩き出す俺を、梢が遠慮がちに呼び止める。
「くれぐれも、お気をつけて」
「あぁ、分かってる」
そう言って、すぐに居間を出た。
桜の間は二階下にある客間だ。
もう、噂の青年は着いていることだろう。
逸る気持ちを落ち着けながらも、少し早足になってしまっていた。
視界に桜の文字が見え、目の前の屏風に手を掛ける。
視界に入る金。
そう、まるで、自ら光を放つように煌めく金。
「やっぱり…」
「お前は……昨夜の…!?」
その鋭い緑の瞳は、驚きに彩られていた。
金色も、緑も、昨夜見たものと何一つ変わらない、俺が見つめていたものそのものだった。
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