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第一罪 「金ト緑」Ⅰ
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満月。
そこに白い何かが重なり始めたのは、もう夜十時を越えた頃だった。
「雪、か。
なかなか降らねぇのに、珍しいな」
夜の街道を一人歩く、美男。
漆黒の大きな瞳、整った顔、目尻に描かれた赤の紋。
紫の着流し、頭の上で1つに纏められた長い髪は黒く、濡れた様に滑らかだ。
ここ、花賀(カガ)で、そのような容姿をしているのは、常識で考えれば男娼ぐらいであるが、彼はそうではない。
その証拠に、彼の腰には一太刀の刀。
だが、この男遊郭に訪れる美女や、遊郭きっての美男花魁たちに劣らぬ美しさ、思わず目を奪われ、離せなくなる程の圧倒的存在感、堂々たる歩き様は、それ以上に強い光を確実に放っている。
街行く女男たちは、男娼を指名するのも忘れ、彼に見入っていた。
その美男に、近寄っていく一人の男。
「おい、そこのあんさんよ。
そんな風に街をほっつき歩かれちゃあ、客も入りゃしねぇよ。
悪いこたぁ言わねぇ、俺の店に来な。
あんたほどの美男なら、すぐに客も入るだろう」
顎鬚の生えた男が、立ち止まった美男を必死に勧誘した。
おそらく、どこかの店主だろう。
普通ならば、この男だけでなく、他の店主らも、美しく気高いこの美男を求めてやまないはずだ。
だが、そんな他の店主らは、顎鬚の店主を冷たく、半分呆れた目で見ている。
彼は、とても馬鹿な事をした。
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