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チョロ松が就職する話 ③
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今日の夜ご飯はとても豪華だった。
母さん、父さんに無理させたかもしれない。
でも、皆精一杯の笑顔で祝ってくれた。
一人を除いては。
――――就寝後――――
何となく眠れなくて今日の余りのビールに手を掛ける。
バレないように玄関の外で。
「月、綺麗だな‥‥‥‥」
腰掛けつつ見上げる夜空に光る月。
程より風が頬を掠める。
まだ肌寒い季節。
けど、肌は熱っぽくて暖かい。
一人になると途端に思い出を引っ張り出してきてしんみりする。
だから、ポロッと涙が出そうになる。
けど、皆の前では泣かないって決めてるから。
「苦しい、なぁ‥‥‥‥」
社会不適合者、好きでやってるんじゃない。
そう言ったけども、多分ずっと抜け出せない。
そんな気がする。
僕が僕達がこの恵まれた環境で育った時点でもう社会不適合者なんだと思う。
人がどうとかってよりもこの環境が。
だって、仕事よりも兄弟でバカ騒ぎしてた方が楽しい。
それを知ってしまってるから。
不意に流れる涙。
抑えきれなかった。
視界がボヤける。
顔を下げ、酔ってるんだと言い聞かせる。
ガラララララ‥‥‥‥
「チョロ松兄さん。」
この声は‥‥‥‥‥‥
「十四松か。」
「隣が居なくて寒かったから。出てきちゃった。」
下げた顔を上げることが出来ない。
だって今十四松の顔見たら、きっと、きっと泣いてしまうから。
「チョロ松兄さん、明日早いんでしょ?」
「うん。」
「寝なくて大丈夫?」
「うん。寝付けないんだ。」
「そっか‥‥‥‥」
肌寒い中、ちょこんと隣に座る。
「寒くないの?」
「うん。布団の方が寒くて苦しい。」
十四松のホンネ。
「苦しい‥‥‥‥?」
「うん、胸が締め付けられてる感じがして寝れないんだ。」
「ごめんな。」
「チョロ松兄さんが悪い訳じゃないよ?」
「‥‥‥‥‥‥そろそろ、布団の中に入ろうか。」
初めてここで十四松の顔を見れた。
驚いた。
十四松は最初から泣きながら話していた。
いつしか十四松もこんな事が出来る様になってたんだ。
「チョロ松兄さんの隣が、一番落ち着く。」
今日は十四松にべったりくっついて寝てもいいかな。
「僕も、十四松の隣は安心する。」
残りのビールを飲み干し、部屋へと戻る。
全てを心の中に仕舞いこみながら。
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