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勘弁してください、と悟が言いかけた時、ようやくレナードの口が動いた。
「サトル、冷たいじゃないか……明日からいなくなる時間が多いんだ。承知した、だけか?」
「……ご期待に添えず、申し訳ございません」
どうやら言葉足らずで、一言二言欲しかったようだ。
しかし、そのことをレナードに指摘されたところで、悟は他に何を言えばいいのか思いつかない。とにかく、レナードに不快な思いをさせたのは悪いと思い、謝罪で返答をした。
それに対し、レナードは一息吐いて、悟の腰を抱いてグッと引き寄せる。
距離が縮まることによって、強まるレナードの匂い。悟は眉を顰めた。
「まあ、いいよ。サトルはαなのに華奢だな。日本人は繊細で美しい」
レナードは典型的なαだ。美貌の持ち主の上に、身長が高く、体つきも程よく筋肉がついていて逞しい。
それを見せつけられると、日本人男性の平均身長を越える悟でも小さいものだ。特にイギリスへ渡ってからは、そのことを重々実感させられた。
それよりも、悟は早くこの状況をどうにかしたかった。このままでは朝食が運べないではないか。だというのに、レナードはひとつの美術品を愛でるように、なかなか離してくれない。
「レナード様、これでは朝食を運ぶことが出来ません」
「そうだな」
「……これ以上はセクハラになりますよ」
「訴えるか?」
「それは私には出来ませんが、他の方にしていらっしゃるのなら控えたほうがよいかと」
それを聞いたレナードは大きく溜め息をついた。
「……本当につれないなサトルは。俺は夜な夜な仕事で疲れてるんだ。ご褒美として茶菓子でも貰いたいものだよ」
そして、そう言いながら親指で悟のふっくらした唇を撫でる。遠回しだが、はっきりとしたアピールだ。
「では、朝食の後にでもご用意いたしましょう」
だが、それにさえも悟は特に気にせず、言葉通りにケロッと答えれば、さすがにレナードも手を上げた。小さく舌打ちをして、腰を抱いている腕を緩める。
「ああ、くそ。本当にお前は……いや、いい。それより朝食を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
やっとのことで解放された悟は、乱れたベストや上着を整えてレナードの部屋をあとにした。
厨房の方へ足を進めるとアルバートを見つけ、すぐさま声をかける。アルバートは執事見習いで、悟の可愛い部下の一人である。
「アルバート、レナード様は自室にて朝食を召し上がるそうだ。メイドと一緒に運んでくれ」
「はい、わかりました!」
アルバートに指示を与え終わると、悟は次の目的にまた一歩踏み出していく。歩幅が大きくなり、それに比例して速度も速くなって。風が冷たいことが、今の悟にとって唯一の幸運だった。
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