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笑顔からして、アルバート自身の中では問題はなかったのだろうが、念のために問いかけてみる。
「すまない。大丈夫だったか?」
「はい! それよりレナード様は朝食後すぐにお出かけとのことです」
すぐに出かける。
頭痛がしそうな気がして、悟は額を手で押さえた。
「ああ……もしかして機嫌を損ねたかな」
レナードには、物凄く子供みたいなところがある。
拗ねてしまったら、その人に会いたくない、声も聞きたくない、らしい。つまり、すぐに外に出て、車で一人の時間を過ごすということだ。しかも、帰ってくる頃には機嫌が戻っているらしく、いつも通りのスキンシップが開始されるといった繰り返し。酷い時には外出してから数十分で帰ってきた、なんてこともある。
しかし、アルバートはそれに気づいておらず、小首を傾げた。
「? そんなことはありませんでしたけど……給仕もサトルさんから任せられるようになったんだな、これからも頼もうかな、と笑顔で食事をされてました!」
ピシッっとガラスにヒビが入ったような感覚がする。
なるほど、アルバートはレナードに褒められたと思って浮かれているだけらしい。しかし、実際には不機嫌な上に、他人を通じて嫌味まで言われるとは。
悟は、呆れたように溜め息をつく。
「……わかった、ありがとう。車を手配しよう。お出迎えの準備だ」
「はい!」
とりあえず、アルバートに罪はない。
本当にしてきた頭痛の痛みを我慢して、悟は使用人やメイドたちに声をかけながら、玄関へ向かった。
車の用意が完了して数分後、車のそばで待機していると、屋敷内よりいってらっしゃいませという声が聞こえてきた。車のドアを開けると、玄関からレナードの姿が見えてくる。
パリッとしたネイビーのスーツに、グレーのトレンチコートを羽織って。体型がいいからこそ、よく似合っている。髪も整髪剤で整えていて、そこにはエリートの顔が出来上がっていた。
「いってらっしゃいませ、レナード様」
レナードが車へ乗ったのでドアを閉めようとすると、レナードの口がそれを遮るように開く。
「朝のこと怒っているか?」
「は……?」
正直、悟は驚いていた。
今、レナードの機嫌を損ねているはず。だから、口を利かないはずでは。しかし、レナードはついさっき言葉を発していて。
「すまない。今日は本当に急用なんだ」
「え……?」
しかも、何か謝っている。頭が回らない。混乱しているからこそ、悟の口から何も言葉が出てこない。
ただただ驚いて目を丸くしていると、レナードの口角はみるみる上がっていく。そして、とうとうクスクスと笑い始めた。
悟の反応を面白がってるかのように。
「俺が拗ねていると思っただろう? 綺麗な目が零れ落ちそうだぞ」
そう指摘されて、かあっと頬が一気に熱くなる。
「……お気をつけて」
それでも、悟は冷静に、気持ちは強めに、車のドアを閉めたのだった。
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