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そういえば、と買い出しの話をしていた時に、思い出したことがあった。
「もうそろそろワインを仕入れとかないと……」
何気なく呟いたそれがアルバートとベンに火をつけたようで。
「なんだ、試飲会か!?」
「え、ほんとですか!」
身体を押し出すように食らいついてきて、悟はしまったと心の中で思う。
試飲会。今に至っては嫌な言葉だ。思い出したくもないのに、意識すればするほど記憶が鮮やかに蘇ってくる。
「……馬鹿言え。レナード様に見つかったらどうする」
「見つからないようにするんだろ!」
やる気満々のベンに対して、アルバートは何か思い出したようで小首を傾げた。
「ん……? あれ? そういえば、前にこっそりした時バレませんでした?」
「あー? そうだったような?」
「ベン、忘れてもらっては困るな。お前が飲みすぎて大騒ぎしたからだろう」
ベンに記憶がないのは、もっともなことだろうが。
とある夜、レナードの口に合うワインは一体どれなのか、という名目で開催された試飲会。最終的には名目さえも忘れ、ただの酒豪祭りになってしまったわけで。酔っているベンがほいほいワインボトルを開けていく様を思い出すと、それだけで頭が痛い。
悟が呆れたように言うと、アルバートも次第に思い出してきたようで、ご機嫌な様子で口を滑らせる。
「ああ、そうでしたね! で、サトルさんがレナード様に呼び出されて……」
「言うな、思い出したくない」
「おいおい、サトル。そんなに酷く叱られたのか?」
叱られるというより、拷問だったというほうが正しいかもしれない。
バレた日の翌日の夜、悟はレナードの部屋に呼び出されていた。何もかも受け入れるつもりで臨むと、強要されたのは酒の共であった。ついつい戸惑ってしまうと、その日は楽しんでいたのに、俺とではそんなことも出来ないのか、なんて言われ、何も言い返すことが出来なくて。しぶしぶ付き合ったのだが、そこからが拷問だったのだ。
何か喋れば愛を囁かれ、お酌をすれば身体を触られ。酒が進むにつれてレナードの気分が良くなってくれば、抱き締められたり、挙句には頬にキスされたりとスキンシップは激しくなるばかり。
その中でも悟が一番恐怖を抱いたのは、レナードのα特有のフェロモンだった。酔って堕ちそうなくらいに強く放たれているそれは、悟を喰らい尽くすように襲って、悟自身も最後にはどうやって耐え忍んだか覚えていないほどだ。
酔うに酔えないとはこういう状況のことだと痛切に感じて、当分の間、禁酒出来たほどに怖い事件だった。
「そう、耐えられない。だから、もうしない」
そう言った悟は、自分自身にも言い聞かせてるようにも見える。
「つまんねえなあ。あのハラハラする感じがスパイスが効いてて面白えのに」
「それ以上言ったら怒るよ」
ニヤニヤと笑うベンを強く睨みつけると、ベンはそれを不都合だと感じたらしく、「嘘、冗談だよ!」と悟を宥めた。
そして、アルバートは何か考えているようで。
「……でも、珍しいですよね。レナード様がサトルさんをこっ酷く叱るなんて」
「そうだな。言われてみりゃ確かに……」
その上にポツンと出てきた疑問がまた会話を広げそうになる。じっと見つめてくるアルバートとベンに対して、悟は一刻も早くこの会話を終わらせたかった。
「ああ、もういいだろ。試飲会はしない。レナード様のお気に入りのところから仕入れる。それで終わり!」
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