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「では、このままではレナード様には薬の効果がなくなっていくのでしょうか」
もし、そうなのだとしたらレナードとは一緒にいられない。Ωだとバレて溺れた上に、番関係が成り立ってしまえば、もう取り返しがつかないことになってしまうからだ。
だが、悟がレナードに仕えているのは、前の主人の縁があってのこと。簡単に放棄することなど出来るわけがない。
「少なくとも、お前に好意寄せている間は徐々にってところか。知ってるか。お前がいるいないで、レナード・ローウェルのフェロモンの量は格段に違うんだ。あれは化物だね。逆に堕ちないお前が凄い」
それを聞いた悟は、この屋敷の使用人たちがβばかりで良かったと思った。αがいれば注目の的となり勘づかれる場合が高くなるし、Ωがいれば言わずもがなレナードにノックアウトであろう。
咲良は、抑制剤を調合する関係で特別にフェロモンに敏感になっているが、大抵のβはα、Ωのフェロモンを感じ取ることはあまりない。あったとしても、出てるか出てないかぐらいで、量までは咲良のように専門としていなければ、不可能に近い割合だ。
「……どうにかなりませんか」
しかし、今の問題は悟とレナードのことだ。
薬が無駄だというのならば、他に何か方法はないのだろうか。悟は、咲良へダメ元で聞いてみる。
「今までの耐久力で勝ってみるか? それとも、他にフリーで発情期中のΩを持ってきたら一発だろうな」
「怖いことを軽く言わないでください」
「相手がレナード・ローウェルなら喜んで、だろ。そこで番関係が成り立てば、あの化物みたいなフェロモンも少なくなるだろうな。それなら薬でなんとかいけるんじゃないか」
「冗談も大概にして欲しいですね」
まるで他人事のようにケラケラと笑う咲良に、悟はゾッとする思いを感じた。
発情期のΩを餌にする。考えるだけで、なんともおぞましい。レナードは大切な主人でもあるのだ。そんなことで穢されるのは絶対に許せない。
「じゃあ、お前が番となるか? なんとかしたいんだろう?」
「……は、今の逢見さんでは話になりませんね。また後日伺いましょう」
とうとう苛立ちの募った悟は、咲良を強く睨みつけた。
ところが、咲良は怯まずに、いつになく真剣な表情に変わって。出て行こうとする悟に言い放つ。
「悟。もうこうなってしまった以上、潮時と考えるのが妥当だろう。今後も続けるのなら、お前の耐久力次第だが、この際、薬をやめてΩらしく生きたらどうだ。Ωは不幸だらけでもない。幸せに暮らしているΩだっているんだ」
そして、振り返った悟に、咲良は静かに言った。
「お前はΩだ。偽ったとしてもαにはなれない」
「それは、わかっているつもりです……」
レナードと会うたび、それを自覚せざるおえないのだから。
口の中が苦く、喉に何かが詰まっているような感覚がした。お守りのような項の跡に触れると、切なくて。どうなるのか、どうしたらいいのか、先が真っ暗な闇の中だ。悟はその思いを、ただ飲み込むことしか出来なかった。
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