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予告通り、レナードは夜に一旦屋敷へと戻ってきた。
やはり時間がないとかで、バタバタと忙しそうな様子であった。これならばダリウスの言う通り、荷物は送る手配をしてそのまま出張先へ行ったほうが最善だったのでは、と思うほどだ。
その中で悟は、レナードに用事があるから部屋に来て欲しい、と言われていた。部屋へ入ると、レナードは黙々と荷物を整理していて。カツン、と靴の音が静かな空間に響いた。その音に気づいたレナードは、悟の方ほうを向いて目を細める。
「来たか、サトル」
「いかがされましたか?」
「んー? サトル、空を見てよ。星が綺麗だから」
なんて無邪気そうに笑うレナード。
「はあ……」
時間がなさそうなのに、何を言っているのだろう、この人は。
それが悟の正直な感想であった。
「特に意味ないって。さっき見たら綺麗だったから、サトルにも見てもらいたいって思っただけだ」
呆気にとられながらも、窓を覗く。
そこには確かに綺麗な夜空が一面に広がっていた。今日は一日中、青空が続いていた影響だろう。雲一つなく、真っ暗闇の中にキラキラと星が瞬いて目立っている。
あまり意識して見ないせいか、こうやってじっくり見ることにより、ますます美しく瞳に映し出されていた。
「どう? 綺麗だろ」
「ええ……」
悟が景色に頬を緩めつつ、振り向くと、
「あっ! あー……」
いつの間にかレナードが目の前に立っていて、驚きと共に肩を揺らす。
レナードの腕は悟へと伸びていて。その手はもう少しで抱き締められたのに、と訴えかけているようだった。
沈黙の間。ポッと小さく明が灯ったような気持ちも、一瞬で興醒めとなる。レナードの作戦が成功していたのなら、今頃ロマンチックでベタな展開になっていたのだろう。
「あの……今ので、なんとなく意図が見えました」
「いや。いやいや、サトルに星を見せたかったのは本当なんだ!」
「然様ですか。では、私はこれにて失礼いたしますので、早くご準備を整えられてはいかがですか」
「ちょ、サトル! 違う……いや、違わないが!」
悟としては、この展開をなるべく回避しておきたい。先ほど振り向いた自分に、花丸をあげたいぐらいだ。
レナード腕をすり抜けて部屋を出ようとすると、流石にそうはさせまいとしたレナードに手首を掴まれた。αらしい強い力で止められて、悟はレナードの視線を射抜くように見つめる。
「レナード様は、お仕事の方面におきましては大変尊敬いたします。ですが、こちらの方面に関しては幻滅させられますね。くれぐれも、お相手の方にはなされませんよう……」
「ああ、なかなか上手くいかなくて自分に腹が立つね。それに俺としては今が大本番なんだがな」
「私にそんなことをしても面白くないでしょう。他の方にされてはどうです? 例えば、ダリウス様とか……」
ダリウスの名前が出てきた途端、レナードはあからさまに嫌な顔をする。
「は? なぜ、そこでダリウスが出てくる? 何勘違いしてる。あいつはただの秘書だぞ」
「私もただの執事ですが?」
静かに返すと、苛立ったような舌打ちが部屋に響いた。
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