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握られた手首にグッと力を込められ、悟の顔が歪む。レナードは苛立った様子で。
「そうじゃない。それを言ったらおしまいだろう」
「先に言ったのは誰ですか……レナード様はローウェル家から独立したとは言えども、一家の主となる存在。私相手では名声が下がるでしょう」
「ならば、ダリウスにも言えることだろう」
「ダリウス様はレナード様の右腕でいらっしゃる。そのことは皆様に知れ渡っていることでしょう。ふさわしい相手と見て、おかしくはないはず」
そう言い切ると、悟はレナードに強引に引き込まれる。ギュッと抱き締める腕は、逃げないようとても強い力だった。壊れてしまいそうな程に。
レナードより小柄な悟の身体は、すっぽり包まれている。密着する身体に、甘ったるく少しずつ犯していくレナードのフェロモン。嫌悪に顔はますます歪むが、ふとレナードの鼓動を聞いて気持ちが紛れる。
まるで運動後のような速い鼓動だ。悟自身がレナードにそうさせているのだと思うと、切なく、心苦しい気持ちになる。
「こうやって簡単に閉じ込めることは出来るのに、本当にお前は何をしても振り向かない」
抱き締める腕は、微かに震えて。それは、胸のうちに秘めていた様々な想いの表れだった。
しかし、応えることは出来ない。応えてはならない。
「レナード様と私は……主と執事です」
「そのうるさい口、塞いでやりたいものだな」
腰に回っていた手が、背中を伝って上がっていく。そして、項へ触れた瞬間、
「! いやだ……っ!」
パン、と乾いた音が鳴り響いた。
悟の手が、レナードの手を振り払っていたのだ。珍しいことに、レナードは目を見開くが、悟自らも無意識下のことで先ほどの行動に驚いていた。
ちり、と項が焦げつくように熱く、痛い。ドクドク心臓が大きく脈打って、冷や汗が吹き出てくるのを嫌なほどに感じる。
「サトル?」
すると、ふいに名前を呼ばれ、我に返った悟は無理やり心を落ち着かせた。
「も、申し訳ございません……取り乱しました」
「いや、俺も悪かった。顔色が悪いが大丈夫か?」
「ええ、ご心配なさらず」
お願いだから、今は見ないで欲しい。触れないで欲しい。
顔を背け、レナードから離れようと胸板を押す。そうしていると、カツカツと廊下のほうから少々急ぎ足の足音が聞こえてきた。その足音がレナードの部屋の前で止まったと思えば、すぐさま扉が開いて。
「失礼いたします。レナード様……」
姿を現したのはダリウスだった。
ダリウスは二人が抱き合っている姿を見て、眉間に皺を寄せる。そして、大股で近づいては力ずくで引き剥がした。
「レナード様、彼が嫌がっているでしょう。それより、ご準備のほうは?」
「……まだだ」
それを聞いて、ダリウスはわざとらしく嘆声を上げる。
「飛行機出立まで時間がないのです。遊んでる場合ではありません」
「ああ、そうだな……」
「では、これにて。貴方もこちらへ」
悟が呆然としている間にテキパキとこなすダリウスに肩を抱かれ、一緒に退出することになった。
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