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「まったく何をやっているのだか……」
「すみません。ありがとうございました」
レナードの部屋を出た後、悟は颯爽とどこかに向かって歩くダリウスの後ろをついて行った。
指の腹で額を押さえながら時計を見て、時間を気にしている様子のダリウス。どう見ても、イライラしているのが丸わかりで。そして、直接、抱き合っているところを目撃されていることもあり、気まずい空気が流れる。
どんどん部屋が離れていき、曲がり角を曲がった直後にダリウスが悟のほうへ振り向いた。ダリウスもれっきとしたαだ。冷たい視線で見下ろされると、迫力があって自然と構える姿勢をとってしまう。
「貴方も貴方ですね。はっきり言って目障りです」
「以後、気をつけます」
は、と嘲笑ったダリウスは悟を壁に押しつけた。
「っ……けほ、」
強引に押しつけられたため、強い衝動により悟は咳き込む。その時に両手も壁に縫いつけられてしまい、手首をギュッと握りつぶす痛みに悟は顔を歪めた。
「どうだか……本当は嬉しいのでしょう?」
「何を言って……」
「まんざらでもないくせに、よく言う」
ダリウスの瞳は、嫌悪の色に染まっている。そんな瞳に睨まれて、悟の喉がゴクリと鳴った。
「知ってますか? レナード様は、いつも俺に貴方の話をするんです。俺が貴方を嫌いなのを知ってて、貴方はいい人なんだって俺を諭すんです。余計なお世話ですよね……よく相談にも乗っているんですよ。そのアドバイスを貴方のために活かしていると思えば、反吐が出そうですけど」
次第に悲痛の表情に変わったダリウスの手の力が緩んでいき、最後には解かれた。立つ気力をなくしてしまった悟は、そのまま壁にもたれかかって、座り込む。
ふふ、とダリウスは小さく笑って。それは月光に照らされ、妖しさが幾分と増していた。
「自分も愚かですね……でも、あの人だから。レナード様だから、許すんです」
つうっとダリウスの頬に伝わる雫。驚くほど静かに流れて、落ちていく。
ダリウスを見上げていることしか出来ない悟は、息を呑んだ。
「あの人が、好きだから……」
「ダリウス様……」
「……今日だって、本当は時間ギリギリなんですよ? でも、少しでも貴方に会いたいって。俺はレナード様のその気持ちが辛い……どうして貴方なのでしょう。同じαで、あの人に仕える立場で……何が違うのでしょうか」
カツン、とダリウスは踵を返して、この場から遠ざかっていく。
痛かった。ダリウスの言葉が一つ一つ悟に刺さって、呼吸をしているのがやっとだった。
好きだけど、伝わらない気持ち。好きだから、嫌いな相手だろうとレナードの行動を許してしまう気持ち。
ダリウスは強い人だ。やっぱりレナードに伝えた通り、ふさわしい相手と言うべき人だ。なぜ悟なのか。悟はΩで、たまたまレナードが運命の番だからで。ダリウスがこのことを知ってしまった時、何を思うのだろう。
──ごめんなさい。ごめんなさい。
膝を抱え、縮こまる。悟に出来たのは、心の中で何度も謝ることだけだった。
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