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あれから三週間ほど経った。
一、二週間ほどのレナードの出張は、海外事業が忙しいらしく、当初の予定より長引いていた。この間に何度かイギリスへ戻ってきているようだが、会社との行き来だけで、この屋敷にはあれ以来帰ってきていない。レナードが言うには、もう少しで帰れるとのことだが、これもまだ未定のことだった。
そのためか、レナードの屋敷では、まったりとした平穏な日々が訪れていた。ある意味、長期休暇のようなものになっていて、旅行に行ったり実家に帰ったりと時間を自由に過ごせている。
「サトルさん、これってどういう意味なんです?」
「ん? どれどれ?」
そんな中で悟はというと、執事見習いのアルバートに日本語を教えていた。
難しい顔をして、テキストに指をさすアルバート。その場所に視線を移動させようとすると、天から手が降りてきてテキストを取り上げられる。
「わかんねえな……さっぱりわかんねえ!」
その犯人は、シェフのベンだった。アルバートよりも酷い顔をして、テキストを見つめている。
「ぎゃっ! ベンさん、邪魔しないでください!」
「邪魔~? お前、俺のこと邪魔って言ったか? お前こそ、朝っぱらからサトルを独り占めしてんじゃねーよ!」
「痛い痛い!」
ベンがアルバートの耳を引っ張る姿を見て、本当に仲が良いなと悟はくすくす笑う。
すると、ベンは本来の用件を思い出したようで、そうそう、と続けた。
「サトル、新しいメニュー作ったんだ。あとで材料とか色々見てもらいたいんだが」
こういう休みの期間中、ベンはよく試作品を作っている。ティータイムには、お菓子を作ったりしてメイドからは大好評だ。
そして、この試作品はレナードへの食事で出したり、パーティーがあればメニューに加えたりしていて。味や費用方面で、悟がチェックしているのである。
「わかった。何作ったの?」
「コース一通り。内容は見てからのお楽しみ」
「へえ、凄いな。早く見てみたいよ」
よっぽどの自信作らしい。ピースサインをして、堂々と大笑いをしている。さらには、悟の興味を逸らしたことで、かなりの優越感に浸っているようで。
「だってよ。ク、ソ、ガ、キ」
ポンポンとアルバートの肩を叩き、口角を上げて意地悪くニヨニヨと笑っていた。
「あーっ、このおっさんムカつくっ! だって、勉強見てもらうのは、前からの約束なんですもん!」
「ストップ、ストップ! ベンもアルバートをからかうの、その辺にしときなよ?」
若干、アルバートの目尻に涙が浮かんでいて、悟は慌てて仲介に入る。喧嘩をするほど仲がいいと思うべきなのか、とにかく放っておくと大事になりかねない二人だ。
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