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「しかし、よくもまあ飽きないよな。日本語とかさっぱりだわ」
理解出来ない、なんてベンがブツブツ呟きながら、テキストをペラペラと捲る。それを聞いたアルバートは、ここぞとばかりにやり返そうとニヤリとして。
「俺はベンさんと違って、勉強熱心ですから」
自慢げに言う姿が、ベンに火をつけた。
「あーん? わかった、お前の食事の量を減らす。絶対だ!」
ああ、さっき仲介に入ったのは、何のためだったのだろう。
目の前のハブとマングースに、悟はやれやれとお手上げ状態だ。
「そういえば、サトルさん聞いてくださいよ。ベンさんったら前の四字熟語のノートを見て、これがかっこいいって言うんですよ」
アルバートが言うそこには“弱肉強食”という文字があって、思わず吹き出してしまう。
「あー、わかるかも。確かに好きそうだよね」
「む、サトル。その意味は一体何なんだ?」
「教えませーん!」
「うっせ、黙ってろ。俺はサトルに聞いてんだよ」
わいわい騒いでいると、そばで話していたメイドたちから悲鳴が上がった。何事かと思えば、みんなの表情が生き生きとしていて、話自体も先ほどよりずいぶん盛り上がっている様子だ。
「何かあったのですかね?」
アルバートが不思議に思うのも仕方ない。悟も最初は近頃に流行っている恋愛小説の話かと思っていたが、それにしては異様な盛り上がりだった。
その辺を歩いているメイドを見つけては、その子を呼び寄せて上がる黄色い声。次第には頬を染めている子や、泣いている子まで出てきて、わけがわからなくなってくる。
言葉が出ず、ただぼんやりと見ていると、ベンが痺れを切らしたらしく、メイドを呼び寄せた。確か、あの子は頬を染めていた子だ。
「ねえねえ、セリアちゃん。何を話してんの? 面白い話?」
「そうです! 聞いてください、ビッグニュースですよ!」
セリアは、手のひらで頬を包んで、話の余韻に浸っているようだった。
「なんと、レナード様がご婚約されるそうなんです~!」
それを聞いた瞬間、どくん、と悟の心臓が大きく脈打ったような気がした。
「はあ!? 何それ、誰と!? 詳しく教えてよ!」
「え、え? 本当に? サトルさん知ってました?」
「え……? いや、初耳……そんな気配まったくなかったけどな」
あの夜の日のことがあったから? それとも、この出張の間に良い人を見つけたから? それとも、──?
──もしかして、番が出来たから、とか?
一つの可能性に、身体が冷えきっていくのが嫌でもわかる。
悟は、動揺していた。本当は喜んで、安心すべきところなのに。これで問題がなくなるはずなのに。どうしてか、素直に受け入れられない自分がいた。
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