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「で、相手は誰なんだ?」
「宝石店のご令嬢らしいですよ!」
悟たちは成り行きで、メイドたちの会話の中に入っていた。
ベンが率先して質問をしていると、それにメイドたちが答えて。その後から羨ましいとか、お似合いなんだろうなとか会話に花が咲いていく。
「その方はご両親のお知り合いだそうで、以前からチラホラこのお話が出ていたんですが、なかなか進まなかったみたいです」
メイドのこの一言に、悟はドキッとした。もしそうならば、悟自身が絡んでいる可能性が高いからだ。婚約の話が事実というなら、悟の存在がいたからこそレナードは婚約を良いように思っていないのだろう。悟がいる限り、承諾するはずがない。
「ああ、そっか。レナード様は、海外へ行くことが多いですからね」
だが、それを知るはずもないアルバートが無難な答えを出して、満場一致で納得させる。
「で。それってさ、どこの情報だよ?」
「そうそう、それ! サトルさんも知らなかったんですよ」
「それは内緒です!」
「女って、こういうとこが怖えよな!」
女性は、噂に敏感だ。
以前からということは、メイドの中では初めての話ではないわけで。屋敷の中で、レナードと一緒に過ごす時間が多い悟でさえも、今の今までまったく気づかなかったのだ。その情報はどこから仕入れているのだろう、と疑問を抱く。
「サトルさん、どう思います?」
すると、ずっと黙りっぱなしの悟を心配して、アルバートが顔を覗いてきた。まさか自分に話が回ってくるとは思っていなかった悟は、咄嗟に不審に思っていたことを述べる。
「うーん……じゃあ、今回の出張が長引いてるのは、その関係もあるのかな……って思って」
海外事業が発展してきて忙しいというのは理解出来るが、今後の予定もわからないほどというのは珍しいことだった。それに、何度かイギリスへ帰って来ているのにも関わらず、屋敷へ顔を出さないというのも初めてのことで。
「え、出張は嘘で、婚約のお話を進めているということですか?」
「いや、出張の件は嘘ではないと思うけど……もしそうなら、同時に話を進めてるんじゃないかな。帰ってきたら、何か話があるかもしれない」
動揺の誤魔化しも込めて、悟はアルバートに微笑む。無理やり作った笑顔だった。
「わー、楽しみですね。いい報告を待ちましょう」
「そう、だね……」
無理に笑ったところで、どうしてか心の中に出来たしこりは取れるはずがないけれども。
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