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自分の心境が整理できないまま、何も解決せずに数日が過ぎた。そして、レナードの婚約の件も同様に、メイドたちと話して以降、特に進展がなかった。
深夜を過ぎて、使用人たちも就寝していて静かな夜だ。
悟はカレンダーを見て、またこの週がやってきたのだと、嫌な気持ちになっていた。周期ごとにあるΩ特有の発情期だ。悟の手には、注射器が握られている。通常のピルに加えて、発情期前にこの特効薬さえ打ってしまえば平気なのだが、やはり周りに敏感になってしまう。それがΩだと突きつけられているようで憎たらしい。
はあ、と重い溜め息をついて注射を打とうとした時、部屋にノック音が響いた。悟は注射器を慌てて机の引き出しに隠す。
「サトルさん、今よろしいでしょうか」
「ええ、どうぞ」
「夜分遅くに失礼いたします」
鍵を開けて扉を開けると、そこに立っていたのは夜の見回り当番にあたっていた執事見習いの子だった。
「どうした?」
「それが……レナード様がご帰宅なさいまして、ご報告に参りました」
「レナード様が? 予定より早いな……」
まだ予定が決まっていない様子だったため、突然の帰宅に驚く。もしかすると、一時的に帰宅しただけなのかもしれない。
「わかった。今すぐ行こう。報告ありがとう」
幸いにも、この後、事務作業をしようと思っていて、悟はバトラー服のままだった。レナードが帰宅したとなれば、早めに出迎えたほうがいいだろう。悟は、早速レナードの部屋へ向かうことにした。
レナードの部屋へ入ると、すでにレナードは部屋に入っていて机の上にある書類を眺めていた。
「おかえりなさいませ、レナード様」
「ああ」
素っ気ない返事だ。疲れているというのもあるのだろうが、悟には機嫌が悪いように思えた。
「ご帰宅の予定は立っていないと聞いておりましたが?」
「だいぶ片付いたから一旦帰ってきたんだ」
レナードは書類から目を離し、椅子の背もたれに体重をかけてくつろぐ体勢をとる。
それは婚約の件も含まれているのだろうか。
海外事業のことよりも、この一件の衝撃が強すぎて真っ先に出てくる。レナードをじっと見ていると、肩や首を回していて疲れているんだな、と苦笑した。
「……だいぶお疲れのご様子ですね。ワインでもいかがですか?」
「そうだな……少し酔いたい気分だ。一緒に飲むか?」
「私は執事です。そのようなことは出来ません」
軽く拒否すれば、レナードはムスッとして。しかし、これが当たり前なのだから仕方がない。
「この前飲んだだろう?」
「あれは罰として、ですよ」
「それもそうだがな……わかった。その代わりに、サトルが一番オススメするのを持ってきてくれ」
「かしこまりました」
なんとか宥めてワインの準備をするために踵を返すと、応接用に設置されたソファーとテーブルがあって、そのテーブルの上に何かが置いてあるのが見えた。用紙の上に写真がクリップでとめてある。
写真を見て、ああ、この人がレナードの婚約者なんだと、すぐに理解出来た。
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