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「サトル? ああ、それか……」
「あ、申し訳ございません。すぐにお持ちいたしますので」
どうやら立ち止まっていたのを不審に思われたらしい。しかし、悟の視線の先のものを見た瞬間、レナードはめんどくさそうな様子で言った。
「謝らなくていい。笑えることに、どうやら婚約者らしいぞ」
さらには、ふん、と皮肉めいた笑いもかましていて。
「ずいぶんな言い方ですね。相手の方に失礼ですよ」
「そう言いたくもなるさ。会ってもいないのに勝手に決められたんだからな」
つまり、この婚約は、政略結婚ということなのだろう。そして、レナードは婚約のことをあまり良いように思っていないようだ。というより、興味を示していないともいえる。
写真をよく見てみると、モデルさんのような綺麗な女性だった。宝石店のご令嬢というだけに、アクセサリーで上品に飾られて、まさしくお嬢様の雰囲気を醸し出している。
「メイドたちが噂をしておりました。宝石店のご令嬢だと……綺麗な方ではありませんか」
「なんだ、知っていたのか。一応言っておくが、婚約は受けるつもりはない」
なんとなく予想はついていたが、レナードの言葉に悟は息を呑んだ。
「どうしてですか? 会っていないのであれば、一度お会いしたらいかがですか。考えが変わるかもしれません」
「そもそも、勝手に決められるのが気に食わない。自分のしたいことをして、相手も見つける。何のためにローウェル家から独立したと思っている」
レナードが席を立つ。途端にきつく睨まれて、怯んだ足が床に植え付けられているように動くことが出来なくなる。
「それにサトル。お前はダリウスといい、その女といい、俺の気持ちを踏みにじるのが好きなのか?」
「いえ、そういうつもりは……!」
カツ、カツ、と迫り来る足音が怖い。
最初からレナードとの距離は離れていなかったため、あっという間に目前まで迫られて。そっと頬にあてられたレナードの手が冷たくて、悟は小さく身体を震わせる。
「俺は最初からお前を選んでいる。それに答えないのはお前だ」
「私はレナード様の執事です」
「またそれか。そんなことを聞きたいんじゃない」
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