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「立場で聞いてるんじゃない。サトルはどう思っている? サトルは、少しでも俺のことが好きか?」
好き……?
悟の中では、好き嫌いとかではなく、レナードは自分の主というレッテルが貼り付けられているのだ。それ以上もなく、それ以下もなく。運命の番だと聞いた時や婚約を聞いた時に、確かに理解し難い感情は抱いたものの、やはりそのレッテルは変わらない。
もとより、主と執事は主従関係のようなものであって、恋愛など、しかも、婚約話が出ている中でもってのほかだった。
「……レナード様、もうお遊びはよしてください」
「遊び? これが遊びだというのか?」
「所詮、一時の戯れです」
「それがお前の答えか……なんだ、本気で口説いてた俺が馬鹿馬鹿しく思えるな」
主と執事。そう考えれば、思いのほか冷静でいられた。
「婚約の件、考え直して頂けますか」
「何を言っている? 考える以前の問題だな」
「レナード様………?」
だが、冷静というのは悟だけに言えることであった。
くくっ、とレナードの口元が歪む。どこか様子がおかしい。瞳が笑っていないのだ。
危険を察知した悟は後ずさるが、もうその時には遅くて。
「お前が遊びだというのなら、もう少し遊んでもらわないと面白くないだろう?」
そこからは、一瞬の出来事だった。
一枚上手に素早く行動したレナードに、腕を捕らえられたと思うと、そのまま引っ張られ近くのソファーへ身を投げられる。そして、レナードが馬乗りになる形で悟の上へ乗りかかり、顎を固定されてから、ぐいっと顔を近づけてきた。
かかる吐息がどこか熱っぽく、漏れ出すフェロモンが悟を蝕む。
悟はそれに負けないよう、レナードを強く睨み返した。
「この前、キスを嫌がっていたな。無理やりしたらどうなる? お前の気持ちは変わるのか?」
「ええ、変わるでしょうね。それは貴方にとって、いい方向ではありませんよ」
「……上等だ」
そう言った後、レナードはニヤリと笑い、唇を近づけて。
「っ、……嫌!」
悟の言葉の抵抗も虚しく、顎をしっかり固定されていたせいで、いとも簡単に唇は塞がれた。重なった唇は軽く啄むと、すぐに離れていく。すると、レナードはご満悦そうに、ペロリと自らの唇を舐めた。
「お前の唇は甘いな」
「ふざけないで頂きたい。貴方と私は主と執事……これ以上の関係はない!」
「うるさい、黙っていろ!」
聞きたくない。そんなふうに口づけが繰り返される。何も考えないまま少し口を開けてしまっていたせいで、今度は濃厚なキスだった。
しかし、レナードの舌が侵入してきて、悟の唾液と混ざり合った瞬間──。
「……っ!?」
ビリッと身体中に電流が流れた。それはレナードも同じだったようで、驚きで咄嗟に唇を離す。
そして、悟の身体の異変はそれだけではなく。
「……ぁ、嫌……いや」
心臓が早鐘を打って、血液が流れるのを嫌なほどに感じる。軽く息が荒くなってきて、熱を出したように体温が上昇して。
──こんな、キスだけで。
悪夢は突然と現れた。しかも、レナードの目の前という最悪な状況で。熱に潤った悟の瞳から、涙が一筋となり零れる。
「オメ、ガ……?」
震える声で、信じられないように言ったレナードの瞳の色が次第に変わっていく。それは、本能の欲に塗れたαらしい色だった。
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