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「あれ? 君、αなの? なんでΩであること隠してるの?」
それが、悟と高嶋晴臣の出会いだった。
周りの洋装とは目立って、ゆったりと着物を着て、羽織りを肩にかけている。ヘラヘラと笑って威厳がなく、αにはほど遠い人。こんな人が、この屋敷を仕切ってるなんて、ありえない。
悟にとって、好印象とは思えない出会いだった。
「……私はαですが」
そして、まさか初対面で疑われるとは思っていなくて、悟は思わず嫌な顔をする。
「はーい、嘘ついても無駄デス。結構、強い薬使ってるんだね。でも、その中のほうで甘い匂いが漏れ出してて危険だよ?」
「……あの、やはりこの話はなかったことに」
そもそも、この家に仕えるという話が出たのは、家系の縁でのこと。良い機会に巡り会えたとは思っていたが、悟はΩであることを隠して、αとして生きるほうを優先したかった。
残念だが、こういうものは最初が肝心だ。そう思い、頭を下げようとすると、晴臣は慌てて止めに入る。
「いやいや、待ってよ! Ωだからって酷いようにしようってわけじゃないんだ。秘密にしてるなら守るし、俺なりに支援しようと思ってる。だから、ここにいてよ」
うーん、と少しの間考えた後、何か思いついたようで、悟の手首を掴んだ。
「あ、そうだ。そんな強い薬じゃ、副作用辛いでしょ。ちょっと来て」
手を引かれて、たどり着いたのは屋敷の中にある庭園だった。
正直、ここに来るまでに、悟の気力はほとんど持っていかれていた。なぜなら、晴臣が誰かと会う度に声をかけるからだ。
──あ、髪切ったんだね。すごく可愛くなったよ! あとね、この子は新しい執事さんなんだよ。仲良くしてあげてね。
──今日もそのお髭決まってるね~! そうそう、聞いて! 新しい執事さんが入ったんだ。可愛いからって、口説いちゃ駄目だよ?
──あれー? みんなご飯? じゃあ、ここで発表しまーす! 綺麗な執事さんが我が屋敷に来ましたよー! 拍手!
ここまでされると、もう逃げることは出来なかった。諦めるしかなかった。
げっそりしてる悟とは反対に、晴臣は生き生きと楽しそうに足を進めて中へ入っていく。そして、ずっと手を繋いでるため、悟も半ば強制的に連れていかれることになる。
「咲良ちゃーん、やりがいのある仕事見つかったよー」
晴臣が話しかける先には、花を手入れするエプロン姿の男がいた。その男は立ち上がって、晴臣と悟のほうを見るなり、目を細める。
「馴れ馴れしく呼ぶなって言ってるだろ、まったく……で、誰? 薬くさいけど」
「新入りの執事さん! 美人さんでしょ? あ、この人はお花屋さんの咲良ちゃん」
悟がペコ、と頭を下げれば、どうも、と軽い挨拶が返ってきた。
「逢見咲良だ。間違っても、咲良ちゃんって呼ぶなよ。それと花屋じゃなく庭師な」
咲良は晴臣の言葉を一つ一つ訂正して、溜め息をつく。そして、その様子に晴臣が笑いながら早速、話の本題へと切り出した。
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