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悟は、ドキドキと鼓動を高鳴らせていた。
視線に映っているのは晴臣だ。お茶の入った茶碗に口づけて、一口飲み干す。すると、表情がぱっと明るくなって。
「わ、凄いよ! 前までも良かったけど、また凄く美味しくなった!」
それを聞いて、ホッと胸を撫でおろした。
「晴臣様に喜んでいただけて嬉しいです」
晴臣が紅茶より日本茶が好きと聞いて、銘柄から種類、入れ方やそれに合うお菓子、すべての知識を入れ込んだ。晴臣のために学んだのだ。それを、晴臣が褒めてくれた。
凄く嬉しい。心から嬉しくて、悟の頬がほんのり染まる。
悟が晴臣の屋敷に来て、半年以上が経った。
相変わらず晴臣は使用人のみんなにフレンドリーで、毎日が楽しく過ごせている。そして、悟は格別に気に入られていて、晴臣の希望で晴臣が屋敷にいる間の大半を共にしていた。
晴臣に可愛がられるのは、嬉しかったしドキドキするし新鮮な気持ちだ。だが、最近はメイドたちに付き合っているんでしょ、とからかわれると、晴臣が冗談でそうだよ、なんて肯定をするものだから、弁解をするのに必死なところもある。
「記念に悟も飲みなよ。ほら、茶菓子もあるしさ!」
「え……。ですが、このような立場で……」
「いいんだよ。みんなでお茶会する時もあるしねー。あ、でも、二人でお茶会したのは内緒だよ? 俺と悟の秘密ね」
「秘密……」
それはちょっと……どころか、かなり嬉しかったり。
すると、部屋にノック音が響き、部屋の扉が開く。
「晴臣様、レナード・ローウェル様がいらっしゃいました」
「あれ、もうそんな時間か……わかった。応接間に通してくれていいよ」
「かしこまりました」
使用人が出ていくと、晴臣は残念ながら顔をしながら、また今度ね、と悟の頭を撫でた。
今日、約束しているレナードという人物は、晴臣の親友らしい。イギリス人の貿易商で、パーティーで知り合ってから交流を続けているようだ。世界各国を回るやり手で、イケメンなαだけど惚れちゃ駄目だよ、と冗談なのか本気なのか晴臣は笑いながら簡単に話してくれた。
「久しぶりだな、ハルオミ」
「って言っても、一年ぶりくらいでしょ」
レナードは、ブロンドに近い明るい茶系の髪を整髪料でまとめていて、ブランドもののジャケットにパンツ、コートという、いかにも英国紳士という雰囲気の人だった。
確かにテレビで出てきそうな顔立ちで、惚れる気持ちはわからなくもない。
「一年ぶり? そんなものだったか?」
「そうだよ。忙し過ぎて頭変になってるんじゃない?」
「酷い言われようだな……」
だが、悟はどちらかというと、晴臣の流れるような英語に聞き惚れていた。それを聞きつつ、レナードと晴臣に飲み物を出す。
最初の頃は紅茶のほうが多かったが、最近は日本茶を出すことがめっぽう多い。晴臣が好きだからというのもあるが、ただこんな美味しいお茶を淹れてくれる子がいるんだよ、と自慢したいらしい。
「レナードは仕事し過ぎなんだよ。ちゃんと休んでる?」
「一応な……だが、やりがいがあるんだから良いだろ。……なんだ、今日は紅茶じゃないのか?」
「そうそう、日本茶。この子が淹れるのは凄く美味しいんだよ」
触れてほしい話題にまんまと乗ったレナードに、晴臣は声を弾ませて話す。その様子に、レナードが晴臣を怪しそうに見つめながら茶碗に口づけた。
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