アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
34
-
一口飲んで、すぐさま残りを飲み干す。そして、物珍しく茶碗を見つめ、喉を唸らせた。
「……これは美味いな」
「でしょ?」
もう一杯欲しいというレナードに、悟はお茶を淹れ直す。おかわりを求められたことはなかったので、心がとても晴れやかな気持ちだ。
しかし、作業の一つ一つを余すことなくじっと見つめられて、それが気になり、どうもやりづらい。興味を持ってくれることは良いことなのだが。
「俺の屋敷にも、こういう執事が一人欲しいものだな」
「何。遠回しにこの子欲しいって聞こえるけど」
「流石だ、ハルオミ」
真面目な顔をして答えるレナードに対して、晴臣は言葉に出来ないほど呆れてしまって大きな溜め息をつく。
「……本当に疲れてるね。容易に“はい”なんて言うわけないでしょ」
馬鹿馬鹿しくてジト目でレナードを見やれば、レナードはその反応を面白がりニヤニヤと悪い顔で返されて。
「ハルオミ、その執事にずいぶん入れ込んでるようだな」
「そうだよ。この子はトクベツ」
「へえ……それはますます欲しくなった」
一方で、おかわり分のお茶を淹れ終わった悟は、レナードに再び出し直した。すると、ありがとうと言われ、すぐに口をつける。かなり気に入ってくれたようだ。
だが、実は悟の心境はというと、それどころではなかった。その証拠に耳が赤に染まっている。
その原因を作ったのは、やっぱり晴臣で。
「駄目。この子は俺の大切な宝物だからね。誰にも渡せないな」
悟は、晴臣までには及ばないが、喋れるくらいには英語がわかる。しかも、晴臣が英語を喋っているのが好きだからこそ余計に聞き取ってしまって、今この状況に陥っているのだ。
特別とか、大切な宝物とか。
しれっと言う、この主人をどうにかしてくれないだろうか。出来れば、そう叫びたかった。
「……晴臣様、何かありましたらお呼びください」
そんな悟は、やることも終えたし、この空間にいると心臓に悪いし、と部屋を出ていこうとする。
「待って、悟」
すると、晴臣が、なぜかレナードも一緒となって止められて、二人相手に断れるわけもなく、結局最後まで部屋にいることになってしまった。
咄嗟のことで困惑した悟は、それ以上、英語を頭の中で訳す余裕はなかったので、二人の話はまったく入ってこなかったけど。ただ一つ気がかりだったのが、たびたびレナードの視線と合って微笑まれると、引き込まれるような、何とも言えない気持ちになったことか。
とにかく、悟にとって悪魔の時間になったことには間違いなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 314