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レナードは、使用人たちにフォローを任せているとは言っていたが、寝てばかりいるわけにはいけない。
そこで、悟は重い腰を上げてバトラー服に着替えた。ぴったりのバトラー服。気持ちもしっかりするようで、それで勇気を貰った悟は思い切って部屋を出る。
悟の姿を見かけると、じっと見つめたり、ひそひそと話したり。夜しか明けてないというのに、話が回るのが速いものだ。そもそも、どんな話が伝わっているのかは定かではないが。ただ予想通りの反応に悟の口元が歪む。
とにかくそういうのは無視して、悟は咲良に会うため庭園に向かっていた。抑制剤がなくなりそうなのと、今回のことにならないためにも避妊薬も貰っておきたかった。
とはいえ、咲良はどう思っているのだろうか。警告されて早々、レナードと番になってしまって。番を作っておきながら、まだ薬を続けるのか、なんて言ってきそうだ。それとも、咲良までも愛想つかせているだろうか。
「サトルさん!」
「え……アルバート?」
すると、行く途中で名前を呼ばれて振り向けば、アルバートが泣きそうな顔で立っていた。今のこの状況で、まさか声を掛けられるとは思っていなかった悟は呆気にとられる。
「大丈夫なんですか? レナード様から体調が悪いと聞いてましたが……」
「大丈夫、気にするほどじゃないよ」
いつものように子犬を思わせる雰囲気に微笑んだ。しかし、その後すぐさま口篭る姿に、嫌な予感がした。
「では、その……みなさんが仰っている噂は本当なのでしょうか?」
アルバートの表情は、信じたくないと伝えているようで。
悟はそこから罪悪感に苛まれ、笑顔が消えていく。
「……噂って? 俺がαじゃなくてΩで、レナード様の番になったっていう噂?」
アルバートを裏切ることになるのだ。いや、もう裏切っている。アルバートだけでなく、みんなの信頼を。
簡単になくなってしまったものに、悟は奥歯を噛み締めた。これは何度目の感覚だろうか。……そんなの、どうでもいいや。
「……嘘、ですよね?」
「本当だよ……ちゃんと番の証があるだろう?」
襟を捲って項を見せると、アルバートは息を呑んだ。
「サトルさん、どうして……何か理由があったんですよね?」
確たる証拠を見せつけた上で、それでも疑ってくるアルバートの気持ちは単純に嬉しい。だが、レナードのことが事実である以上は、アルバートを遠ざけなければならなかった。
「アルバート、しばらくは俺に話しかけないほうがいい。この件はあまり良いように言われてないだろうから」
「サトルさん……!」
アルバートが悟側についてしまえば、悟と同じ扱いを受けるだろう。それに、アルバートは悟のように立場が上ではなく、執事見習いだ。酷い扱いがヒートアップする可能性も高い。このことに関係のないアルバートを巻き込んで迷惑をかけたくないかった。
──ああ、そういえばアルバートに日本語を教えられなくなるな。
それは残念だけれど、悟はアルバートの声に振り向かず足を前に踏み出すことだけを考えていた。
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