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レナードは、部屋で一番目立つ大きな地球儀をくるくると回していた。見た目に品があるため何をやっても様になっているが、こうやって地球儀を回す姿は楽しそうで、レナードらしい一面の一つだ。
「おかえりなさいませ、レナード様」
「来たか」
それから、部屋に入ってきた悟の姿を目にすると、小さく笑って地球儀を止める。
サトル、と名前を呼び、近づいてくるレナードに対して、悟は嫌な予感がしていた。
身体を重ねた夜以降、こうやってレナードに呼ばれ話すことはあったが、レナードは何らかの作業をしながらの会話であったのだ。今のように、対面して話すのは久しぶりだった。さらには、近づく瞬間に増えたレナードのフェロモンを感じ、一歩足を後退させる。
「レナード様? いかがされましたか?」
「サトルは、俺が婚約を破棄したことを知っているのか?」
嫌な予感が見事に的中して、どくん、と悟の心臓が一際大きく跳ねた。この件に関しては、いずれこの時が来るのだろうと思っていたが、いざとなると思わず動揺してしまう。
悟は、なるべく冷静に心を落ち着かせて、口を開いた。
「……ええ。噂で耳にしておりますが」
「今日、すべて方がついた」
どく、どく、と鼓動が全身を使って共鳴する。
「……と、言いますと?」
「破談だ。それで、そういうような話を一切持ちかけないようにした」
「っ、なぜですか! なぜ、そのようなことを……!?」
悟はレナードに飛びかかった。レナードの胸元のジャケットをギュッと握り、睨みつけるような視線を送る。
今回ならまだしも、今後一切なんて。呆れるにもほどがある。
しかし、それにレナードは動じず、淡々としていて。
「なぜか? そんなの決まっているだろう。俺たちは番だ。お互いパートナーとして相応しいだろう」
「いいえ。レナード様は、大事な時期でいらっしゃる。私をパートナーにしたところで、利益どころか不利益になりますよ」
「結婚に利益を求めてどうする? 前にも言ったが、相手は自分で決める。それに、今すぐ籍を入れるわけではない……だが、番ならば将来的にそうあるべきだ」
この人は何を言っているのだろう。結婚する? 籍を入れる? まったくもって理解が出来ない。
レナードの胸元を掴む悟の手が緩んだ。よろめきながら後退し、レナードから離れていく。ふと、悟の中にある糸がプツンと切れて、悟から次第に笑いが零れてきて。
「番、番って……あの時は無理やりだったくせに……私を自分のものに出来て嬉しいですか?」
「何が言いたい?」
嘲笑う悟に、レナードは眉間に皺を寄せた。
「貴方はαらしい人だ。晴臣様とは全然違う……」
「なんだと……もう一度言ってみろ」
腹の底から低く唸るような声を出すと、悟の口元が歪んだのが目に映った。
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