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しかし、ありえないことであった。
もうすぐ発情期の時期にかかる、というのは確かなことだ。だから、いつも通り二日前ほどに特効薬を打ったのだ。勿論、ピルも毎日欠かさず飲んでいる。
なのに、なぜ──?
先程のレナードのフェロモンにあたったからだろうか。だが、気が紛れてしまうほどあたった覚えはない。
わからない。それという原因が思いつかない。これでは、まるで薬がまったく効いていないみたいではないか。
何がどうであれ、とにかく発情期の症状を発症させたまま、この場にいることは出来ない。部屋に戻って……特効薬を再び打つべきか。
悟の額に冷や汗が滴る。特効薬というのは効能が良い代わりに、副作用で身体の負担が大きい。咲良の調合するものは、それが少ないとはいえ、短期間に多く服用するものではないのだ。
「レナード、さま……」
無意識で口にした言葉に、悟はハッとした。熱く色っぽい声。発情してしまった身体は、番のレナードを求めている。レナードに抱いて欲しくてたまらない。
その気持ちを少しでも抑えたくて、欲情して震える身体を抱き締めると、バサバサ、と物音がして振り返る。
そこには、メイドが真っ青な顔をして立っていた。さっきの音は何冊か本を落とした音のようだ。
見られてしまった。ここにはいられない。
悟は、ふらふらとしながらも立ち上がる。そして、両手で口を押さえているメイドに対して笑みを作って口を開いた。
「……レナード様だけには、伝えないで」
そう言い残して、部屋を目指した。
その後は、特に問題が起こることなく部屋にたどり着く。部屋に入ることで安心感を得るが、身体は冷めることを知らず、下半身は痛いくらいに張りつめていた。
特効薬を打って、このはしたない下半身を治めて……。そう考えていると、悟の瞳に人影が映って。
「サトルさん!」
「え……?」
どうやら、アルバートはまだ部屋に戻っていなかったらしい。
「? サトルさん、大丈夫ですか?」
明るい笑顔で悟を出迎えるが、悟の様子の異変に気づいて心配しながら近づいてくる。
「アルバート……部屋に戻っていいって言ったのに」
「すみません……それより具合が悪そうですけど」
アルバートの手が伸びてくる。その瞬間──。
「触るな!」
パン、と乾いた音が響いた。
悟がアルバートの手を払い除けたのだ。本当は、そんなことをするつもりじゃなかった。だが、アルバートの手が悟に触れようとした瞬間、尋常ではない嫌悪感が悟の中で渦巻いて。
「あっ……すみません」
「ごめん、そういうつもりじゃなくて……」
悟は前髪をぐしゃりと掻き回す。
先程の拒否反応は、番がいるΩの一つの行動だ。発情期中のΩは番がいる場合、番以外のものを受け付けない。
気持ちが悪い。
身が震えて、カチカチと歯が何度も当たり鳴っている。
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