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もぞもぞと悟が身体を動かすと、シーツの擦れる音が聞こえてきた。
背中には暖かいレナードの体温があって。今は安らかな寝息を立てていて、悟から離れないよう後ろから抱き締められていた。そして、その回された手は恋人のように悟の手と絡めている。
一度だけでは治まらなかった発情。あれから落ち着くまで、何度も抱かれてしまった。身体を清めてすっきりしているが、セックス後の気だるさと下半身の鈍痛は消えそうにない。
自分は一体何をしているのだろう──。
番を解除するようお願いしておきながら、その後すぐにレナードの身体を求めて。言うこととやることが矛盾し過ぎている。しかし、レナードと番である限り、これからもレナードを求めてしまうのだろう。
怖い。Ωでいることが怖い。
悟は、奥歯を噛み締める。レナードを求めてはいけない。こんなΩの血で汚してはならない。わかってる。
でも、レナードのそばにいることを、だんだん心地良く思っている自分もいて。今だって……繋がる手、絡み合っている脚。レナードの匂いがするベッド、一時的に借りたシャツ、浴室で使ったボディソープ。きっと悟から匂うだろうレナードのフェロモン。すべてがレナードに包まれて、一つになったようで。
それが全部──全部、心地良いのだ。
「晴臣様……」
──私の番は、晴臣様だけ。
あの時、レナードへ言った言葉に偽りはないはずだ。
しかし、晴臣の番の証が薄れ、レナードに上書きされた今。不相応な気持ちを抱いている今。まだちゃんと晴臣と繋がれているのだろうか。
「晴臣、さま……」
晴臣が好き。愛している。その気持ちさえも、今は罪になるのだろうか。
ぽたり、と落ちた涙がシーツを濡らした。それから漏れそうな嗚咽を、空いている手で抑える。
どうしてΩなんだろう。
これまで何度思ったことだろう。
Ωでいて幸せ? Ωなりに生きる道がある?
周りから励まされる言葉は苦しいものだ。その言葉は偽善であって、本当はそうじゃない。みんなを傷つける。たくさんのものをなくす。それが続くのが、どれだけ辛くて苦しいことか。
「ん……」
「っ!」
すると、レナードが急に動き出し、悟は起きてしまったのではないかと慌てる。だが、レナードはぎゅっと悟の身体を引き寄せただけで、すぐにまたすうすうと寝息を立て始めた。
ほら、これも心地良く感じてしまう。
悟は苦笑した。その温もりを感じながら、ふと窓のほうに視線を向けると、曇りだった空は荒れて雨が降りだしていた。
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