アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
60
-
悟はベッドから出て、レナードの元へ歩み寄ろうとする。
「あっ……!」
しかし、途中で腰が抜けてしまい、転けそうになってしまった。強い衝撃が来るかと思えば、そうではなくて。
「大丈夫か?」
衝撃に耐えかねるためにぎゅっと瞑っていた目を開けると、レナードに抱きとめられていたことがわかった。耳に優しい声が響いてハッとした悟は、慌ててレナードの胸板を押し離れていく。
「そ、そんなことより、なぜあのようなことを!?」
「もうこの屋敷では知られていることだ」
レナードは机に行き、そこに置いてある先程アルバートがいれた紅茶を一口飲んだ。その姿は、酷く落ち着いている様子だった。
悟は違和感を感じながら、話を続ける。
「だからといって、私はそのような立場ではございません!」
「番ならば、いずれ嫌でもそうなるだろう……」
「そんなことをしたら……!」
すると、レナードが微笑んできて思わず黙ってしまった。
そこから見える歪んだ口元が、番になった日のことを思い出させたからだ。悟の背筋に悪寒が走る。レナードが何を思っているのかはわからないが、すべてを見ている、受けとめている、そんな雰囲気を感じた。
紅茶をすべて飲み干したレナードは、ソーサーにカップを置く。
「だからなんだ? 俺が一番失うのが怖いのはサトル、お前だよ」
「それでαの権力で、Ωの私を手中に収めるつもりですか」
悟の言葉に眉を寄せ堅い顔をするレナードだが、その表情はすぐに冷笑へと変化した。
「その言い方だと聞こえが悪いな……お前もお前で酷いだろう。発情期だけ身体を求めて。恋人でも番でもないというなら、俺は都合の良いセフレか何かか?」
「違う、違うっ……それは違います!」
「言っていることも、やっていることも、これではお互い様だな」
重苦しい言葉が、やけに流暢に聞こえた。
その中でも空気が淀んでいく様に、吐き気がする。悟の見える先が、目の前まで真っ黒く染まっていくような気がした。
立っている気力さえなくした悟は、ズルズルとへたり込む。やまない吐き気は酷くなる一方で、震える手で口元を押さえて。その手は、血が通ってるのを疑うくらい冷たかった。
そんな悟をレナードは、先程の言動とは裏腹に強く抱き締める。何がなんだか考えることもしないし、抵抗する気も起こらない悟は、まるで人形のようだった。
「……嫌いですよ、貴方なんか……嫌いです」
ただ静かに呟いて、流した涙がレナードのシャツを濡らす。
「もう……それでもいいだろう。それでも、繋がっている。俺たちは番だからな。そして、俺はお前だけを愛し続けよう」
──俺がΩだからなの?
歪んで、壊れて。こうなったのはすべて──。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
61 / 314