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レナードは中庭に来ていた。
プランターや、花壇に埋められた色鮮やかな花々。丁寧に整えられたその道に沿って奥へ向かうと、目的の人物──咲良がいた。
咲良は、本を捲りながらプランターに新しい種を植えて、水を与えている。
「サクラ、話したいことがある」
「これはこれはレナード様。ウチの悟が何かしましたか?」
嫌に笑顔を向けてくる咲良に対して、あまり思い出したくない人物が浮かぶ。レナードは、溜め息をつきつつ、手のひらで額を押さえた。
「ああ、ハルオミみたいな言い方をしないでくれ」
「ずいぶんと滅入っているようで」
「……本題に入る。昨日、サトルが発情したのだが、前もって打っておいた特効薬が効かなかったそうだ。フェロモンもだいぶ抑えられていたし、昨日だけで発情が治まったから打っていることは確かだろう」
咲良の眉が寄る。そして、軍手を外して立ち上がった。先程の笑顔とは打って変わって、真剣な表情をしている。
しかし、変わらずペラペラと捲り続ける本。人体のイラストや、よくわからない数式が羅列されている。どうやら、その持っている本は花の本ではなくて、発情期や抑制剤などΩに関するもののようだ。
「効かなくなっていくのは予想していました……ですが、早すぎますね。それに、効かないというのは、貴方の強いフェロモンにあたればという話ですよ」
「サトルも言っていたが、薬を強くすることは出来ないのか?」
すると、咲良は困ったように苦笑する。
「……番である貴方が、そう言うとは思いませんでしたね」
「それはそれだ。今は出来るか出来ないかの話だ」
「はっきり言ってしまえば、出来ません。これ以上のものを与えると、身体への負担は相当なものになります。それでも、毎日ピルを飲み続けているというのに……拒否反応の出る可能性が高い」
そうか、と短く答えたレナードは難しい顔をする。レナードの思考は茨のように入り乱れて、正直どうすれば正解なのか導き出すことが出来なかった。
Ωは番が出来ると、安定する。そんな言葉を聞いたことがあったが、今はその気軽さに怒りを感じるほどだ。そして、悟を愛してるが故に、何も出来ないことにも。
「それと、ピルの成分を強くしたのは、今回の話だけではないんですよ」
「過去にもあるのか……」
咲良は本を閉じて、一息吐いた。
「ある時期から、悟はずっとそればかり言い続けてましてね。さっきの負担や拒否反応ともども説明したんですが……数回か。それで、今ギリギリでやって来てるんです」
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