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俺はΩなんかじゃない──。
突き刺す針の感触は、余計に痛く感じた。薬が体中を浸透していく。安心感を得るとともに、身体はどんどん傷んでいって。
気持ちが悪い。眩暈がする。吐き気が込み上げてトイレに向かおうと立とうとするが、足に力が入らなくてそのまま床に身体を打ちつけた。
──ああ、晴臣様。こんな悪い私をお叱りください。
雨が降り続いていた連日、久しぶりに晴天が訪れた。
仕事がだいぶ落ち着いて、悟は気分転換に屋敷の中を歩いていた。空気を入れ替えようと開いている窓からは、雲ひとつない青空が広がっていて。爽やかな風に、少し残った雨の香り。その空気の中で深呼吸すると、とても気持ちがよかった。
心のどこかで気分転換というのも兼ねて、晴臣に会えたらいいな、と思い歩き続けていると、晴臣がバルコニーの長椅子で寝そべっているのを見かけた。その瞬間、心が踊って、身体がぽっと熱くなる。
「晴臣様、こちらにいらっしゃったのですね」
「あ、悟〜! 一緒にひなたぼっこしよう!」
「ひ、ひなたぼっこ……ですか?」
悟が声を掛けると、晴臣は無邪気な笑顔で出迎えた。
「そうそう。天気も良いし、風も気持ちいいからね」
「確かに、そうですね……」
晴臣と同じことを考えていた。そんなことも嬉しくて、悟はバルコニーから見える景色を眺めながら微笑んだ。
すると、晴臣が上体を起こして、隣をポンポンと叩く。
「立ってないで座って。ほら、こっち」
言われた通りに隣へ座ると、晴臣は当たり前のように悟の膝へ頭を乗せて。
「わっ……晴臣様、これが目的でしたね?」
「そうだよ? 凄く綺麗な眺め」
何か悪いことでもあるの、とでも言うかのように満足そうな晴臣。
こんな風に子供っぽく甘える晴臣が好きだ。ここ最近は、たくさんの晴臣の好きを見つけている。見つけ過ぎて、好きは溢れるばかりだ。愛して、愛されて、くすぐったい。
晴臣の髪を撫でながら悟も空を見上げると、ぶは、と晴臣が吹き出して。
「違う違う。本当に鈍感だなあ……君のことだよ、悟」
「え……ええ?」
凄い口説き文句に愛おしく微笑まれて、悟の頬はボッと火がついたように熱くなって真っ赤に染まった。
「ふふ。かーわいい」
その頬に晴臣の手が触れ、優しく撫でられる。そして、悟も負けじと唇を尖らせながら、晴臣の頬を可愛がって。次第にクスクスと二人で笑い合う。
「悟、少し寝ていい?」
「はい。どうぞゆっくりお休みになってください」
寝やすいように晴臣の頭を撫でて、手を絡める。すると、晴臣からはすぐに安らかな呼吸が聞こえてきた。
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