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「疲れてるでしょう? 少し触るだけだから……」
そう言って撫でる手つきは優しさから、いやらしさに変わっていって。ゾクゾクしたものが悟の背中を駆け巡った。
晴臣は、悟のことを気遣っている。こうやって何度か肌を重ねてきたが、悟の発情期は必ず避けていた。だから、狂おしいほど身体を求めあったことはないし、もちろん番になるということもしない。
──だったら、俺の番になれって言われたらそうするの?
だが、悟は覚えていた。晴臣が一瞬だけ見せたαの瞳を。
それだけではない。ふとした瞬間に晴臣は悟の項に触れてくるようになった。時々気づいて、ごめんね、と苦笑するが、その割合は少ないため無意識のことなのだろう。
あの時は冗談だよ、と笑っていたが、晴臣はどこかしらで望んでいるのだ。悟と番になりたい、と。
「私のことは気にしないで……晴臣様のいいようにしてください」
晴臣が望むなら、何でもしてあげたい。
そう強く思うことから、悟は恐怖を抱きながらも、薬を飲むことを躊躇うようになっていた。怖さで衝動的に飲む日や、晴臣を想ってそのまま薬を机にしまう日。それは疎らで、葛藤の日々だ。
悟は、晴臣に少し体重をかけて寄り添う。すると、くすくすと晴臣の笑い声が聞こえてきた。
「そういうこと言ったら、止まらなくなるよ?」
「……はい。どうぞ」
冗談交じりな晴臣の言い様に、悟は間を置いて答える。そして、晴臣の着物の襟合わせから手をするりと入れると、肩にかけられていた羽織りが落ちていって。手のひらで直に感じる体温に気持ちが昂って、勢いで着物を脱がせようとすれば、晴臣にその手を掴まれて阻止されてしまった。
「だーめ」
「どうしてですか……?」
「そんな可愛いことをしたら、俺がもっと駄目な男になるから」
晴臣がそう言いながら、悟を近くにあるベッドへ押し倒す。
ふかふかのベッドは、晴臣の匂いでいっぱいだ。鼻腔をくすぐられて、心も一緒にくすぐられる。
悟の顔の隣に晴臣の手がついて、そのまま体重が乗ると、ぎし、とベッドが軋んだ。晴臣は空いた手で、シーツに散らばった悟の黒髪を撫でて。それなのに、意地悪そうに笑う。
「そういう晴臣様も好きですよ……全部、好き……」
全部好き。本当はこれ以上入れ込んでしまうと、もう二度と戻れなくなってしまいそうのに、どうしようもなくて。
なぜだか涙が出そうで、最後のほうは声が震えた。
「悟……可愛い悟……」
「晴臣様……」
優しい晴臣に包まれる。ぎゅっと抱き合って、離れないように。
お互いに求め合う身体は、シーツの皺を深く刻んでいった。
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