アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
73
-
悟は誕生日パーティーの準備のため、忙しい毎日を送っていた。通常の業務と並行して行うためか、確実に仕事量は増えている。
そのせいもあって、晴臣と会うのは給仕など業務上のものだけで、ゆっくりした時間を過ごせていない。それに、晴臣もそのことを察していて、無理に悟を呼ぼうとはしなかった。正直、寂しい気持ちもあるし、発情期のこともあり焦りが生まれているのも事実。
「……じゃあ、これで。あとは逢見さんに任せます」
「わかった」
咲良と話していたのは、パーティー用に飾る花と晴臣に渡す花束についてだ。
花束については、まず未完成のものを晴臣に渡しておき、屋敷の者たちみんなが一本ずつ花を挿して花束が完成するという計画になっている。一人一人、晴臣を祝えるように。晴臣も毎日、積極的に使用人たちへ声を掛けていることだし、そのほうが喜ぶだろう。
種類や色、大まかなことを決めると、外は真っ暗だった。夕食をとった後に話を持ちかけたからかもしれない。
「それでは、もう夜遅いので。付き合ってくれて、ありがとうございました。おやすみなさい」
「悟、もう少し付き合え」
「はい。何かありましたか?」
悟が咲良の部屋を出ていこうとすると、咲良に引き止められる。
振り向けば、咲良はニヤニヤとしていて。そんな顔にさせるようなことをした覚えがない悟は首を傾げた。
「それはこっちのセリフだ。何か良いことでもあったのか?」
「え……?」
「薬くさくない。これと関係あるだろう?」
「え? えっと……」
薬のことを言い当てられて、悟の心臓は素直に跳ねる。何か誤魔化そうかと考えを巡らすが、この時点で目が泳いでいて咲良にとっては丸わかりな行動だ。
悟の滑稽な姿に耐え切れなくなったようで、咲良がぷっと吹き出す。
「そんな焦ることないだろ。晴臣とのことぐらい屋敷に知れ渡っていることだし」
悟は悟で、言葉をなくしているようだ。黙ったまま頬を染めていく。
咲良の言う通り、晴臣と悟の関係は今や屋敷の者ならば常識の範囲となっていた。最初は弁解をしていた悟が次第にしなくなっていって、ようやく結ばれたのね、とメイドたちが祝いのお茶会をこっそり開いていたのをよく覚えている。なにより、二人が幸せそうなオーラを知らないうちに放っているためか、見ている側もほっこりするというか、歓迎ムードになっていた。というのが流れである。
「お前の場合は、薬を過剰摂取してるからな……減るのは良い傾向だ。晴臣と番になるのか?」
咲良の質問に、悟はこくんと頷いた。それはもう幸せそうに。
そんな姿を見て、咲良も頬を綻ばせる以外にない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 314