アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
74
-
「少しサプライズも込めて、薬のことはまだ晴臣様には内緒にしているんです」
「なんであれ、番になるのは晴臣も喜ぶんじゃないか。晴臣自身、それを望んでいたようだし」
「本当ですか?」
悟は思わず身を乗り出してしまって、机がガタンと揺れる。やはり、あの項を触る仕草は番になることを示していたのだ。
「いつの日かそういうことを口にしてたよ。祝儀を用意する日も近いかもな」
いつの日か、ということは最近のことではなさそうだ。
求められるのは嬉しい。しかし、晴臣に気を遣わせていた。きっと、悟が番の話で身体を震え上がらせたあの日から。
今度は悟から晴臣へ応える番だ。たとえ、それが短い期間だったとしても、一番近い存在でいたい。
「サプライズもいいが、晴臣とよく話し合っておくことだ。まあ、お前らなら大丈夫だろう」
「はい。ありがとうございます」
咲良に一礼して、部屋を立ち去る。
そして、部屋に戻っていると、ゆっくり歩いている晴臣と出くわした。いつも肩にかけている羽織りは、今晩は珍しく身につけている。
思いがけない偶然に、悟の心はときめいた。先程、咲良と晴臣の話をしたせいで、ますます恋しくなっていたのである。
一方で晴臣は悟の存在に気づいてないようで、悟から話しかける。
「晴臣様? どういたしましたか?」
悟に気づくと、晴臣は一瞬目を丸くして、いつものようにふんわりと優しい微笑みを見せた。
「気分転換に散歩だよ。悟は? もう仕事終わったのかな?」
「ええ。今から自室に戻ろうかと」
「そっか」
自然と近寄っていって、触れ合える距離になる。
プライベートでこういう距離になるのが、実際は数日なのに久々のように思えて、不思議と悟の心はドキドキと高鳴っていた。それだけ晴臣に満たされているのだと実感する。
「晴臣様はいかがいたしますか?」
「俺はもう少し夜風に当たろうと思うよ。最近、忙しいでしょ。ゆっくり休んで」
「はい。晴臣様も夜は寒いので、お散歩もほどほどにしてくださいね。では、おやすみなさいませ」
そう言って悟は歩きだそうとするが、晴臣が何か考えているように見えて、咄嗟に足を止めてしまう。どうしたのだろう、と疑問を抱きながら見つめていると、その視線を感じとった晴臣が困ったように笑って。そうして、一つ咳払いした後に続ける。
「やっぱりちょっと待って……せっかくだし、少しだけ俺とデートしませんか?」
突然のお誘いに、悟は瞳をパチパチと瞬かせた。
「返事は?」
「もちろん……喜んで」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
75 / 314