アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
76
-
ティーセットの乗ったワゴンを晴臣の部屋まで持ってきて、早速、お茶をいれ始める。
それを先に部屋でくつろいでいた晴臣が見て、ソファーから立ち上がった。向かうのは、もちろん悟の元だ。そして、向かうなり後ろから悟へ腕を回す。
「晴臣様?」
「ねえ、悟。もうすぐ発情期だよね。薬はどうしたの?」
「あ……」
晴臣が悟の手に持つ茶碗を取り上げてから、悟はようやく本題がこれのことなのだと気づいた。
晴臣は勘づいている。さっきなんとなく様子がおかしいと思ったのも、これで理解が出来た。
「微かにだけど、甘い匂いが漏れてる。初めに会った時以来、感じたことなかったのに……どうして?」
後ろにいる晴臣の表情はわからないが、声音はいたって冷静なもので。
「晴臣様の病を知った時、私は番になることを拒否してしまいました。それから、ずっと考えて……それで、決心したのです。だから、薬も……」
悟が振り向くと、回された腕が緩められる。正面を向いてまっすぐ見つめれば、晴臣の瞳と視線が重なって。ますます緊張感が高まっていく。
悟は一息ついてから、口を開いた。
「晴臣様……私を貴方の番にしてください」
言ってしまった。
当初の予定より早く言ってしまったが、悩んでいた期間を含めば、ついに、という気持ちだ。
当然のことながら、晴臣は驚いている。まさか番になってくれ、なんて言われるとは想像していなかったようだ。だが、晴臣は悟の手を握って、そっと微笑む。
「悟……ありがとう。俺のために悩んでくれたんだね。凄く嬉しいよ」
笑顔と優しい声に、悟はホッと胸を撫で下ろした。しかし、これこそまだ始まりに過ぎなかった。
「……けど、駄目だ」
「どう、して……?」
舞い上がっていた気持ちが、一気に谷底へ落とされたような気分だ。
「それは悟が一番わかってるんじゃないかな。震えてる……無理は駄目だ」
晴臣が言ったそれは、拒否ではなく心配だった。
言われてみて初めて気づく。晴臣の手の中に収まっている悟の手は震えていた。
悟自身、なぜだかわからなくて。あれだけ心に決めていたはずなのに、薬もやめることが出来たのに。治まれ、と思うほどに震えは止まらなくて、悟に焦燥感が生まれる。
「違っ、これは……!」
次の瞬間、ぶわっと晴臣のフェロモンが出るのを感じた。一瞬だけ見えたαの瞳。それだけで血の気が引いていくのを実感する。
その途端に、悟の目の前は床に敷いてある絨毯になっていて。何がどうなったか理解に苦しむが、悟はうつ伏せに倒されて、その上から晴臣が押しつけている体勢となっていた。
威圧的に放たれるフェロモンは、消えることを知らず強く悟を蝕んでいく。こんな晴臣なんて知らない。
まだ発情期は来ていない。なら、晴臣は微かな悟のフェロモンに誘発されたのだろうか。突然のことで頭が回らない。
混乱している中で、ふと悟の項に晴臣の吐息があたった。
「晴臣様……っ!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
77 / 314