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グッと押さえ込む力が強く、悟は痛みに顔を歪めた。
αに見えないは、ただの思い込みでしかなかった。目の前にいる晴臣は正真正銘のαだ。怖い。晴臣が怖い。じわ、と悟の目尻に涙が溜まる。
そして、とうとう晴臣の唇が悟の項に触れて、我慢しきれなくなった悟は叫び声を上げた。
「……っ、いや!」
「……ね?」
ハッと息を呑んだ。次第に晴臣のフェロモンも薄まっていき、押さえつけられる力も消えていく。
晴臣に身体を起こされた悟は、そのまま晴臣の胸へ収まって。ぎゅっと抱き締めてくれる腕や、あやすようにぽんぽんと叩いてくれる手に大きく安心感を抱いた。涙を堪えるよう、晴臣の胸元の布の握り締める。
「ありがとう、悟。その気持ちだけで、今でも十分満たされてるよ。番のことは、またゆっくり考えていこう」
「それでは、いつまでも……」
「悟が縛られる必要はない。番じゃなくても、こうやって一緒にいられるでしょ?」
しかし、これが晴臣の本心ではないはずだ。だから、悟も行動を起こしたのである。
「でも、晴臣様は私と番になることをお望みですよね……?」
「悟……」
「でしたら、私の項に触れてくるのはなんでですか? 番になりたいから、触れてくるのではないのですか?」
晴臣は珍しく眉を寄せた。そして、重い空気に開きたくもない口を開く。
「ああ、そうだね……望んでないと言えば嘘になる」
「ならば……!」
「じゃあ、さっきみたいに嫌がる悟を押さえつけて、無理やり奪えって言うの?」
悟の言葉は、晴臣のものに重なってしまった。
初めてと言ってもいいくらいに珍しく晴臣に強く睨みつけられて、悟は思わず怯んだのだ。背中にある晴臣の手は拳を握って、ふるふると震えている。
「あ、あれは急なことに驚いただけで……」
「同じことだよ……それにお互い発情してしまえば、止まらなくなる。あれ以上に悟は傷つくかもしれないんだ。それだけは許せない」
苦し紛れな声が耳に残った。
晴臣は腕を解いて、悟に背中を見せる。その晴臣を見つめ、悟は脱力した。
悟は晴臣のことを想い、晴臣は悟のことを想う。想い合っているからこそ、交錯する気持ち。早まった? でも、晴臣には時間がなくて。決心が甘かったから。やはりΩの自分は無力なのだ。
絶望に満ちて行く中で、晴臣の明るい声が届く。悟の瞳に映ったのは、いつも通りの太陽みたいな笑顔だ。
「怖い思いさせちゃってごめんね。少し落ち着こう。お茶は俺がいれるからソファーに座ってて」
晴臣は優しすぎる。
抑えきれなかった涙が、つうっと頬を伝った。混ざり合ういろんな感情で胸がいっぱいになって、その痛みに悟は胸を押さえた。
その時──。
「ぁ……」
どくり、と一際大きく鳴った鼓動。身体の奥底からマグマのように熱いものが広がっていくのを感じた。
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